2013 Fiscal Year Annual Research Report
創造的跳躍としての類比(アナロジー)-隠れた方法概念によるディルタイ哲学の再構築
Project/Area Number |
23520045
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
山本 幾生 関西大学, 文学部, 教授 (00220450)
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Keywords | 理解 / 類比 / 類型 / 解釈学 / 歴史的社会的現実 / 精神科学 |
Research Abstract |
本研究は、ディルタイ哲学の研究史のなかで従来主題化されることのなかった「類比(アナロジー)」に注目し、それを彼の哲学の〈隠れた方法概念〉として捉え、彼の哲学を再構築することを目指している。本年度は研究最終年度として、彼の哲学が、理解概念を類比的な創造的跳躍として意味形成し、これによって精神科学に固有の学問的客観性を開拓し、かくして歴史的世界の創造的な構築を目指した哲学であることを解明した。その具体的な内容、そしてそこから帰結する重要性、意義は以下のとおりである。 ディルタイの理解概念は、前年度に明らかにしたように、最初期の概念形成から類比に基づいているがゆえに、理解に基づく歴史的世界の構築も、普遍史的構築ではなく、生の謎に回答を与える個々の世界観の類比的な類型化として試みられ、これによって精神科学固有の客観性が求められたのである。彼の哲学は、当時の学問的状況の中で、とりわけヘーゲル以降の哲学を新たに形成しなければならない状況の中で、精神の絶対性あるいは普遍性を前提あるいは求めるのではなく、個々の生の出来事から出発し、それら相互の作用連関を解明しながらその全体を歴史的世界として構築することを試みているのである。 ここから次の点が帰結する。すなわち、歴史は、絶対的精神によって完結・完成されるものではなく、常に未来に開かれ、したがって歴史的全体は未完結的で不断に変動するのであり、それゆえに彼が提示する解釈学は、一方で、個々の過去的出来事が全体形成の仕方に応じて常に理解し直される可能性を含意しているとともに、他方で、未来に向けて歴史的世界を創造的に構築する可能性をも含意しているのである。これが彼の解釈学において従来の研究で見過ごされていた重要な局面である。
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Research Products
(6 results)