2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520053
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
辛 賢 大阪大学, 文学研究科, 講師 (70379220)
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Keywords | 劉牧 / 易数鉤隠図 / 九宮 / 河図 / 洛書 / 五行 / 象数 / 王弼 |
Research Abstract |
平成25年度は、宋代に盛んに行われた河図洛書学について関連文献を分析し、その議論内容を分析した。なかでも北宋の劉牧が著した『易数鉤隠図』を取り上げ、「河図」「洛書」に対する劉牧の理解、とくに陳摶の「龍図」に関する劉牧の解釈の特徴について検討を行った。 「龍図」に対する劉牧解釈の最大の特徴は、「五」と「九」のカテゴリーから生ずる五行生成図と九宮図の二図を、それぞれ「洛書」と「河図」と見なしているところにある。この問題は、従来の研究のなかでも取り上げられてきたところであるが、とくに報告者が注目したい問題は、王弼易に対する劉牧の哲学的立場とその背景である。 そこで、陳摶の龍図を河図・洛書の原点とする背景とは何か、また、その思想史的意味について考察を進めた。「九宮図」や「五行生成図」、従来の研究によれば、漢・唐にかけて論じられていた九宮説および卦気説、そして五行説を背景に成立しているとされている。さらにまた、『易』繋辞伝に見える太極説・大衍の数が龍図の数理的論理と深く関わっているとの指摘もこれまでなされてきたところである。そのなかでも注目すべき問題点は、王弼易における「太極」と「一」の問題である。劉牧は「遺論九事」のなかで、王弼の「貴無論」に対する反論を展開しているが、それは、「無」と「有」の存在論的議論として展開し、さらに「象」と「数」との哲学的議論として発展していく、劉牧独自の解釈が見られる。今年度は、これらの諸問題を中心に検討を進めてきたが、まだその考察水準が充分とは言い難く、今後、さらに検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成25年度は、宋明に盛んに行われた河図洛書学について、いくつか重要文献を取り上げ、考察を行う予定であったものの、資料分析にあたり予想以上に時間が費やされ、当初目標にしていた課題解決にまで至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の研究計画を踏まえて、劉牧の河図洛書学における哲学的議論が、のちの宋代哲学史に与えた影響、および朱子の『易学啓蒙』に受容された「本図書」を初めとする四篇の易図の内容とともにそれらの四図を受容するに至った歴史的背景を考察する。これらの問題を検討することにより、宋代における河図洛書学の展開、さらに哲学的特徴を浮き彫りにしうるものと予想される。なお、最終年度に際して、これまでの研究内容を整理し、研究報告書を作成する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度では、主要テキスト分析に集中していた事情から、新たな書籍・資料を購入して研究の幅を広げることは出来なかったが、次年度は当初の計画とおり、資料の調査旅費や書籍の収集に充てる必要がある。 課題関連の書籍購入および調査旅費、さらに研究成果報告書の作成に充当する予定である。
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