2011 Fiscal Year Research-status Report
先秦から隋唐に至る天文暦法を中心とした科学技術の社会思想的研究
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23520056
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
南澤 良彦 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (50304465)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 魯班 / 東勢 / 司馬遷 / 韓城 |
Research Abstract |
本年度は先秦~兩漢時代における当該研究課題について研究した。具体的には(1)科学技術者の社会思想的研究及び(2)天文暦法思想を具現化した禮制建築の研究である。(1)については、春秋戦国時代の公輸班(魯班)及び前漢の司馬遷に特に注目し、彼らを今なお尊崇する社会的背景を検討した。公輸班(魯班)は機械工学・土木工学・手工芸の製作で名高く、後世工匠(エンジニア)の「祖師」と崇められた。報告者は23年10月に台湾台中市東勢に所在する魯班廟を訪れ実地調査を行った。当地の魯班廟は正式には、「巧聖先師廟」と称され、清朝乾隆40年(1775)の創建、現存の魯班廟の中では世界最大の歴史と規模とを誇る。報告者は当廟にて魯班像を初めとする造像・壁画・所蔵資料等を綿密に調査した。司馬遷については同年11月にその郷里である中国陝西省韓城を訪れ、其の墓を含む関連遺跡を実地調査した。周知の通り司馬遷は「太史令」として『史記』を著した大歴史家であるが、太史令の職掌は実は歴史編纂ではなく、暦の編纂及び管理運営である。(1)については他に馬融―鄭玄師弟の学問の科学思想的要素を研究した。(2)については10月に中国西安、11月に北京における禮制建築の実地調査を行った。具体的には西安の漢唐都城遺跡の調査、北京の天壇の調査である。これらの遺跡・施設は前近代中国が天人相関思想のもと、都市や建築物に過剰なまでの象徴性を与えたことの証拠であり、今回の調査ではそれらの象徴的意匠を細部に至るまで確認した。以上、本年は台湾・中国での実地調査が主であった。これらの調査は実地調査でなければ得難い現実感により、今後の研究により正確性と多面的視野を与えるという意味で、極めて有意義であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、中国の先秦から隋唐に至る科学技術(者)の直面した諸問題を、天文暦法の分野を中心として、社会思想的に研究することを目的とし、時代を追って行う計画とした。本年度は先秦~漢代を扱うとしたその研究計画をほぼ達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題はその研究目的及び研究計画に基本的な修正は必要ない。ただし方法論としては、実地調査の重要性が極めて顕著になったことから、実地調査を主とするように変更する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の24年4月に中国北京清華大学で「首届(第1回)礼学国際学術研討会」が開催され、報告者が本研究課題に関連する研究発表を行うことが決定したので、本年の研究費のうち、必要額をそれへの準備と参加のために振り向ける。また本年度は実地調査を主とするので、予算内で当初の計画より物品費を減らし旅費を増額する。
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Research Products
(1 results)