2012 Fiscal Year Research-status Report
先秦から隋唐に至る天文暦法を中心とした科学技術の社会思想的研究
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23520056
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
南澤 良彦 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (50304465)
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Keywords | 明堂 / 建築 / 元嘉暦 / 魯班道 |
Research Abstract |
本年度は魏晋南北朝時代における当該研究課題について研究した。(1)独自性を獲得したにも拘わらず、依然儒学の風下に置かれる科学技術(者)の葛藤に着目し、研究を行った。(2)自然科学が今日的な意味での科学に発展しつつあった過程で、魔法的・呪術的性質と如何に決別したか、或いはしなかったか、(3)また技術の伝統―魯班道が如何なる展開を見せたかも、主要な研究テーマであった。 (1)については明堂なる中国固有の禮制建築に着目し、魏晋南北朝時代に於けるその発展を研究した。明堂とは四季の運行を順調ならしめるために天帝に祭祀を捧げる禮制建築である。その性格上明堂は中国の天文暦法及び建築技術の体系と儒教的世界観とが総合された象徴的構造物であり、まさに本研究課題にとって恰好の研究対象なのである。本年度の研究によって、南北朝時代の明堂は文系官僚がリードした南朝では西晋の裴ぎ{危頁}の明堂論の深刻な影響をうけたが、北朝では理系官僚が主導することによってそれを克服し、規模の点で南朝を凌駕する明堂を構想し得たことを解明した。 (2)については南朝宋の元嘉暦に着目した。科学的に極めて正確な天文暦である本暦は科学者と伝統墨守の官僚との間の論争を捲き起したが、その際科学者は観測と計算とに基づく科学的事実にだけ立脚しており、今日の自然科学者と遜色ない科学主義の持ち主であったことを解明した。 (3)については魯班の史実と伝説とを丹念に辿ることにより、卓越した技術者であった魯班が神格化され、彼の創始した中国伝統建築技術の伝承が魯班道と呼ばれるようになったことを解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、中国の先秦から隋唐に至る科学技術(者)の直面した諸問題を、天文暦法の分野を中心として、社会思想的に研究することを目的とし、時代を追って行う計画とした。本年度は、魏晋南北朝時代を扱うとしたその研究計画をほぼ達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題はその研究目的及び研究計画に基本的な修正は必要ないが、実地調査に加えて、在外調査研究の機会が増加していることを踏まえ、国内外での中短期滞在による調査研究を織り込んで、より効果的に成果に繋げる研究方法を構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度11・12月に香港大学に於いて行った在外研究がめざましい成果をあげたことを踏まえ、次年度に於いても国内外での中短期滞在による調査研究を行う。そのため、研究費は極力旅費に傾注する。
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Research Products
(4 results)