2014 Fiscal Year Annual Research Report
先秦から隋唐に至る天文暦法を中心とした科学技術の社会思想的研究
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23520056
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
南澤 良彦 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (50304465)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 科学技術 / 社会思想 / 建築 / 将作大匠 / 中国古代中世 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、最終年度として、これまでの研究成果を踏まえ、その不十分な面を補充し、総合的に概観して、本研究の意義をより明確にした。具体的には、それまでの3年間に行った、先秦~漢・魏晋南北朝・隋唐各時代における(1)科学技術と科学技術思想、(2)科学技術者の伝統の2項目について、前近代中国の国家科学技術を代表する天文暦法・建築工学2分野の歴史的展開と特徴とを解明し、それらの知見を踏まえて、(3)科学技術の社会的意義の問題を考究した。 特に、建築工学のトップ官僚である將作大匠に着目して、その両漢・魏晋南北朝・隋唐各時代における制度及び被任命者に求められた素質の実態と変遷とを、文献を丹念に調査して跡付け、中国古代中世の政治史・思想史の中に位置付けた研究は、顕著な成果を達成した。これは、科学技術の社会思想研究における本邦初で、世界的にも類を見ない特筆すべき重要な研究である。 本研究は、中国の先秦から隋唐に至る科学技術の直面した諸問題を、天文暦法を中心として、社会思想的に研究し、科学技術の社会的意義を解明するものであった。前近代中国において科学技術は国家経営の基盤の一つであり、科学技術者たちは官僚制の中に組み込まれ、相応の地位を与えられた。それ故に科学技術は自然科学のみならず人文科学や社会科学と密接に関係しており、科学史研究に止まらず、広く社会思想的研究の対象とされるべきであり、ここに本研究の意義が存する。 文系(中国哲学)研究者が行った本研究は、社会思想的観点を加えることで、従来、ほぼ理系出身学者が行ってきた科学技術史研究を補完し、中国古代中世科学技術史研究を、より有意義で実り豊かなものとした。また、国家と科学技術との関係の研究と捉えれば、今日の我が国及び世界が直面する巨大科学技術の国家管理という、極めて喫緊の課題に対して、貴重な示唆を与える重要な研究ともなったのである。
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Research Products
(1 results)