2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520058
|
Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
佐藤 実 大妻女子大学, 比較文化学部, 准教授 (70447671)
|
Keywords | 中国イスラーム / ムスリム / 儒教 / 金天柱 / 清真釈疑 |
Research Abstract |
前年度までの研究実績をふまえて、本年度は『清真釈疑』にみえる「上帝」と「主宰」「真宰」の語の意味的差異から、金天柱ひいては中国ムスリムの日常的な神イメージを考察した。 形而上学的な文脈で神を説明したり議論する際には、「主宰」「真宰」の語が使用される。両者の違いは、「主宰」が一般名詞として使われるのにたいし、「真宰」はムスリムがいう神、つまりアッラーを指している可能性が強い。一方で、日常的に神に対して礼拝をささげる、というような文脈で指示する場合は「上帝」の語がもっぱら使われている。とくに、沐浴をしてから礼拝をするといった、日常的身体的動作をともなう場合にはほとんど、その礼拝対照は「上帝」と呼ばれる。これは「上帝」という漢語が伝統的で歴史を有する語であり、中華に住まい、漢語を母語とする人びとにとって、日常語として血肉化した語であると考えられる。それは、本来は儒家的な用語ではあるが、中国ムスリムにとっても母語であった。また、時代はやや下るが、「上帝」という語があたかもアッラーという名を忌むかたちで、つまり神の字(あざな)として人びとが使っているという回儒からの指摘もある。漢語を母語とする人びとの「上帝」という語にたいする感覚がみてとれる。 さらにいうならば、中国ムスリムとしては、そうした「上帝」にたいして、毎日、礼拝を捧げ、つねに「上帝」をこころに抱いているという自負があり、彼らからみれば、漢族をはじめとする人びとが儒教の規範を実践していないと写った。そのために『清真釈疑』では儒家批判の言説がしばしば見られる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『清真釈疑』の訳注・解釈作業を中心とした研究目的はほぼ順調である。
|
Strategy for Future Research Activity |
釈疑文献ではないが、非ムスリム(を含む人びと)との対話によるイスラーム解説書として、王岱輿の『希真正答』があったことが確認された。今後、この『希真正答』の言説も視野において『清真釈疑』の解釈を行っていきたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外調査を予定していたが、諸事情によって実施できなかったために次年度使用額が生じた。 海外調査を実施する。
|
Research Products
(3 results)