2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520059
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
永冨 青地 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50329116)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 中国明代思想 / 鄒守益 / 中国 |
Research Abstract |
平成23年度においては、本研究の基礎となる調査として、現在までに活字化された、陽明学関係の文献学的資料を網羅的に収集した。特に大陸において新たに編纂された『王陽明全集』を調査することによって、今日までの王守仁とその弟子たちとに関する逸文収集の水準を確認できた。一方で、明代文献学に関する欧米の文献の収集も行い、この分野の最先端の情報を入手している。これらの成果に基づき、永冨が収集を開始した鄒守益文献のうち、従来知られていないものがどれであるかを確認することが出来た。その結果、新発見の資料である事が確認できたものに関しては、すでに翻刻の作業を開始している。 以上のような調査に基づき、平成23年度において、以下のような成果を挙げることが出来た。まず、陽明学研究における文献学の意義に関して、「陽明学研究における文献学の意義―『王文成公全書』所収の「年譜」への挑戦」(『東アジア書誌学への招待』第二巻/東方書店、123-146、2011年 12月)において検証し、同時に江戸期の日本においてどのように陽明学の文献学的研究がすすめられたのかに関しては、「佐藤一斎と『伝習録欄外書』-江戸期における陽明学の研究」(永冨青地編『儒教 その可能性』/早稲田大学出版部、121-167、2011年 12月)において詳説することが出来た。 一方、明代文献学に関する欧米文献の調査の成果としては、「ケンブリッジの漢籍コレクションについて」(ジョセフ P. マクダーモット(著)、永冨青地(訳)、『人文社会研究』52号、1-20、2012年3月)がある。これらの成果は、次年度以降の研究に道筋をつけるものである。。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成二十三年度においては、本研究の基礎となる調査として、現在までに活字化された、陽明学関係の文献学的資料を網羅的に収集した。とくに大陸において新たに編纂された『王陽明全集』を調査することによって、今日までの王守仁とその弟子たちとに関する逸文収集の水準を確認できた。一方で、明代文献学に関する欧米の文献の収集も行い、この分野の最先端の情報を入手している。これらの成果に基づき、永冨が収集を開始した鄒守益文献のうち、従来知られていないものがどれであるかを確認することが出来た。その結果、新発見の資料である事が確認できたものに関しては、すでに翻刻の作業を開始している。 以上のような本年度の成果のうち、とくに重要なものとしては、今まで知られていなかった鄒守益の文集から、研究者が利用したことのない大量の鄒守益の詩を発見したことが挙げられる。これは、詩作のような文学を軽視していたという、今までの陽明学像を描き変える可能性を持った発見であり、研究開始一年目にして、すでに重要な成果を挙げたものといえるだろう。また、ヨーロッパを含む海外所蔵機関の調査も順調に進んでおり、この方面においても、すでに一定の成果を挙げている。これらの成果は、それ自体が価値あるものであるとともに、次年度以降の調査の基礎となり、道筋をつけるものとしても重要なものである。 以上のような成果に基づき、平成23年度においては、研究はほぼ順境に進んでいるものと判断する次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成二十四年度においては、まず、中国に現存するテキストとの比較対照をするため、内閣文庫(東京)・蓬左文庫(名古屋)・京都大学人文科学研究所(京都)・大阪府立図書館・関西大学図書館(大阪)・九州大学文学部図書館(福岡)などの図書館に所蔵される関連文献を系統的に調査し、書誌学的データを確認の上、関係のテキストのマイクロフイルム化を進める。そして、それらの文献の出版事情を研究することによって、明代の思想背景の中でのこれらの著作の有する意味について研究を進めていく。その後、中国大陸の各図書館、具体的には、中国国家図書館、北京大学図書館、上海図書館、復旦大学図書館、四川省図書館、南京図書館において、基本的なテキストの収集を行う。また、中国に現存するテキストとの比較対照をするため、平成二十三年度に収集した日本国内の各所蔵機関における関連文献との比較を詳細に行い、テキストのマイクロフイルム化を進める。 平成二十五年度においては、探索の範囲を宋明心学者の文献を多数所蔵する海外の図書館へと広げる。プリンストン大学ゲストオリエンタルライブラリー、ハーバード大学図書館等の北米の各図書館および台北故宮博物院、中央図書館、中央研究院などの台湾の各図書館である。蒐集した資料の複写が終了した時点で、それぞれのテキストの記載内容を詳細に比較することにより、従来知られていなかった鄒守益文献がどれだけ収録されているかを明らかにし、硬直化した従来の研究に刺激を与えることが可能となる。 その成果は論文として纏め、日本国内での発表と同時に中国語訳し、中国の学界に紹介する。このような資料の発掘は、中国・台湾の学界が日本の学界に対して期待しているものであり、国際交流の面でも成果が期待されるためである。特に、永富は中国の学会誌に研究動向の執筆を要請されているため、海外の学界に対する刺激となることが期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成二十四年度の計画としては、まず、中国に現存するテキストとの比較対照をするため、内閣文庫(東京)・蓬左文庫(名古屋)・京都大学人文科学研究所(京都)・大阪府立図書館・関西大学図書館(大阪)・九州大学文学部図書館(福岡)などの図書館に所蔵される関連文献を系統的に調査し、書誌学的データを確認の上、関係のテキストのマイクロフイルム化を進める。 そして、それらの文献の出版事情を研究することによって、明代の思想背景のなかでのこれらの著作の有する意味について研究を進めていく。その後、中国大陸の各図書館、具体的には、中国国家図書館、北京大学図書館、上海図書館、復旦大学図書館、四川省図書館、南京図書館において、基本的なテキストの収集を行なう。その後、中国に現存するテキストとの比較対照をするため、平成二十三年度に収集した、日本国内の各所蔵機関における関連文献との比較を詳細に行い、必要なテキストのマイクロフイルム化を進める。 そのため、関係機関での調査のための旅費、複写費などが必要となる。とくに関係機関の都合もあり、一年目において調査できなかった諸機関の調査が今年度に行われることとなったため、一年目に予定されていた経費の一部が、本年度の使用へと変更されている。
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