2012 Fiscal Year Research-status Report
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23520059
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
永冨 青地 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50329116)
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Keywords | 王守仁 / 鄒守益 |
Research Abstract |
平成24年度においては、引き続き王守仁の弟子たちに関する文献の収集を努め、鄒守益の著作の成立、出版および各時代における流布状況について考察を行った。とくに、鄒守益の著作の編集、出版と関わった人物について考察し、その著作の出版に関わった人物のネットワークを分析した。そのうち従来知られてこなかった逸文を収集し、翻刻を行った。また、鄒守益を含めた王守仁の弟子たちによる出版活動の過程を考察し、王守仁の言葉の書籍に定着した歴史について論文をまとめた。以上のような研究に基づき、「思想家の言葉はどのようにして書籍に定着したのかー王陽明を一例として」(『文化都市 寧波』/東京大学出版会 98-119 2013年 2月)。また、本研究で得た知見も生かして、読む事典として企画された『中国・日本<漢>文化大辞典』(明治書院)のために「王守仁」、「陽明学」、「李贄」などの項目を執筆した。なお、欧米における明清思想文献の研究文献の収集と翻訳にも行い、その成果として下記の論文を翻訳した。「19世紀のベストセラーについて:四堡における商業出版」(シンシア・J・ブロカウ著、永冨青地訳、『人文社会科学研究』№53、29-86、2013年3月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度においては、本研究の中心課題である、鄒守益関係の資料の網羅的な収集を行った。特に大陸において新たに編纂された『陽明後学文献叢書』を調査することによって、今日までの王守仁の弟子たちの逸文収集の水準を確認できた。これらの成果に基づき、永冨が収集を開始した鄒守益文献の翻刻を体系的に行うことができた。その成果の一部は、「思想家の言葉はどのようにして書籍に定着したのかー王陽明を一例として」において、鄒守益の残した文献からの言及として活用することができた。また、本研究の背景となる、中国の出版文化に関する調査の一環として、「19世紀のベストセラーについて:四堡における商業出版」を翻訳し、当該分野における欧米の研究水順を確認することができた。さらに、本研究によって得た知見は、『中国・日本<漢>文化大辞典』(明治書院)のための「王守仁」、「陽明学」、「李贄」の各項目において、十分に活用されている。 以上のような成果に基づき、平成24年度においては、研究はほぼ順調に進んでいるものと判断する次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
過去二年間において収集した資料の分析を進めるとともに、研究成果を、目録・口頭発表・論文の形で、日本内外の学界において発表する。すでに2013年8月に中国・鄭州で開かれる予定の明清思想研究をテーマとする学会から招待され、本研究の一部の成果を発表する予定である。また、引き続き、佚文の翻刻・翻訳を行い、学会発表の形で公開する。なお、それらの資料は随時中国語で論文を発表し、中国の学界に紹介する。 このような逸文の発掘は中国・台湾の学界が日本の学界に対して最も期待しているものであり、国際交流の面でも大きな成果が期待されるためである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に引き続き、文献の調査、翻刻を進める同時に、すでに得られた研究成果を、目録・口頭発表・論文の形で、日本内外の学界において発表する予定である。明清時代の思想研究に関する書物を購入するほか、資料整理の際の研究補助のための謝金、日本国内と海外で開催される学会に参加するための旅費が必要である。
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Research Products
(2 results)