2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23520063
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
後藤 敏文 東北大学, 文学研究科, 名誉教授 (40215497)
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Keywords | 業と輪廻 / ヴェーダ / 仏教 / アヴェスタ / 死後の観念 / インド・イラン文献学 / 印欧語比較言語学 / 古代宗教 |
Research Abstract |
仏教,インド思想史を貫く公理である「業と輪廻」の観念は,ヴェーダ宗教における祭式理論の展開がもたらした必然的帰結である。しかし,その経緯は必ずしも研究者に共有されておらず,後の時代から出発する研究者の中には,土着思想から取り入れられた観念とするなど証明不可能な主張をする者がある。本研究は,リグヴェーダ,サンヒター文献, ブラーフマナ,ウパニシャッド,仏典をはじめとする関連箇所を検討して精密な翻訳,注解を作成し,「業と輪廻」理論の具体的 展開次第を信頼できる資料として提供することを目的とした。さらに,ゾロアスター教の『アヴェスタ』に見られる死後の観念との比較を通じてインド・イラン共通時代に遡る要素の残存についても確定を試みた。 最終年度には,『リグヴェーダ』(前1200年頃編集)からブラーフマナ,ウパニシャッド,仏典に至るまでの主要な典拠を見直して原稿を作成し,展開の全体像を明らかにした。近い将来の出版を計画している。 「業と輪廻」を構成する諸要素を,インド・イラン共通時代,インド・ヨーロッパ共通時代に辿り,他方,人類史に普遍的な要素を抽出する作業は内容上概観に止めざるを得ない。アヴェスタにおける関連箇所については信頼できる資料を作成した。沈む太陽,夜の太陽光の救出などについて,『リグヴェーダ』等とヨーロッパ,ユーラシアの考古学的資料などとの照合を試みたが,さらに分析考察を進めたい。 出版に際しては,葬送儀礼との関連,ジャイナ教の輪廻観,エネルギー循環の理論等についても触れたい。 最終年度中に,以前の科研プロジェクトの成果の一部であり,本計画にも関係する『リグヴェーダ』ドイツ語訳第2巻(Berlin)とOld Indo-Aryan Morphology and its Indo-Iranian Background(オーストリアアカデミー)の出版を見たことを付記したい。
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