2011 Fiscal Year Research-status Report
ヴァーグバタの著作を中心とするインド伝統医学文献の写本資料収集と原典批判研究
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23520073
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Research Institution | Kyoto Gakuen University |
Principal Investigator |
山下 勤 京都学園大学, 経営学部, 教授 (00319435)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 医学史 / インド伝統医学 / アーユルヴェーダ / インド学 / 仏教 / サンスクリット / インド |
Research Abstract |
(1)インド伝統医学文献の文献学的研究:インド・マハラシュトラ州のBharata Itihasa Samsodhaka Mandala、Bhandarkar Oriental Research Institute、Asiatic Society of Mumbai、ケーララ州のOriental Research Institute and Manuscripts Library Trivandrum、Vaidyamadham mana等において紀元後7世紀頃の医学者ヴァーグバタの著作の写本を中心に現地調査を行い、医学書『アシュターンガ・フリダヤ・サンヒター』と『アシュターンガ・サングラハ』の写本資料コピー作成、写真撮影を行った。またネパールのNational ArchivesのNepal-German Manuscript Preservation Projectの協力を得て、ネパール国内で発見された『アシュターンガ・フリダヤ・サンヒター』と『アシュターンガ・サングラハ』を含むヴァーグバタの著作の写本のマイクロフィルムを入手した。さらにイギリスのBritish Libraryの協力を得て、同ライブラリーが所蔵する1800年代に出版された『アシュターンガ・フリダヤ・サンヒター』の版本のコピーを入手した。そして、これらの資料の解読研究を行った。(2)インド伝統医学の臨床治療の実態に関する資料収集および調査研究:ケーララ州の伝統医のうち、研究代表者(山下)の同地における先行調査によって協力関係が確立しているナンブーディリの家系を調査対象とし、治療実態に関する聞き取り調査等を行った。(3)インド伝統医学文献の解読・分析によるインド医学理論の研究:ヴァーグバタの弟子ジャッジャタによる著作『ニランタラパダ・ヴィヤーキャー』の写本解読を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)これまでの研究代表者(山下)の先行研究が順調であり、多くの研究成果を積み重ねてきていること、(2)インドでの現地調査では、これまでにも研究代表者(山下)と共同研究を行ってきたインド人研究協力者とのさらなる緊密な協力関係を築けたことの2点が、本研究でも現在まで順調に成果を出すことができている大きな理由である。 今後は、現地で得た写本や古版本などの資料の解読研究にさらに時間がかかる予定であるが、これまでの先行研究の積み重ねの結果、今のところほぼ予定通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
インド・ケーララ州、マハラシュトラ州、西ベンガル州などの図書館や資料館での写本資料の調査を進め、写本のコピーや写真などを可及的多く集めること。さらに、これらの資料を詳細に解読分析し、7世紀頃の医学者ヴァーグバタの著作を中心にインド伝統医学の歴史的発展過程についてさらに研究を進める。また同時にインド・ケーララ州などにおいて、インド伝統医学の臨床実践についての調査を進め、記録を作成する。次年度はこれらの研究成果の一部をヨーロッパのワークショップや学会において発表する予定であり、当該分野を代表する学術誌であるElectronic Journal of Indian Medicineなどにおいて論文を発表する予定である。 今後も、本研究ではインド伝統医学の理論と実践の両面から、その発展の歴史について研究を推進する予定である。具体的には7世紀頃の医学者ヴァーグバタの2大著作『アシュターンガ・フリダヤ・サンヒター』と『アシュターンガ・サングラハ』の写本資料を用いた両医学書成立史の研究を進める。またヴァーグバタの弟子とされるジャッジャタの『ニランタラパダ・ヴィヤーキャー』の写本を用いた解読研究を、本研究の研究協力者であるデンマーク・コペンハーゲン大学のKenneth G. Zysk教授と共同で進める。さらにインド・ケーララ州における伝統医の伝承の中に、ヴァーグバタの影響と見られるものを探し、ヴァーグバタのインド伝統医学発展史において果たした役割について研究を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
インドでの現地調査のための費用、本研究成果の一部のヨーロッパでの学会における発表のための費用、写本資料のコピー・写真収集のための経費など。また研究に必要なラップトップコンピューターやプリンターなどの購入も予定している。さらに現地調査の際の協力者への謝金として使用することも予定している。
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Research Products
(3 results)