2012 Fiscal Year Research-status Report
自然的宗教史から見た人間存在における悪、死そして救いの構造研究
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23520078
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
諸岡 道比古 弘前大学, 人文学部, 教授 (70133915)
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Keywords | 自然的宗教 / 生と死 / 悪 / 救い |
Research Abstract |
東北哲学会主催で昨年度行われたシンポジウム「シェリングにおける自然と神」に提題者として招待された際、報告したものを加筆し論文「シェリングと神-後期哲学を中心として-」に纏め、『東北哲学会年報』No.28に掲載した。この論文は、シェリングが自然を神との関係において、いかに捉えているか、を彼の後期哲学に属する諸著作において検討したものである。それはシェリングの初期哲学から後期哲学に至るまでの自然概念を通覧するとともに、カントやフィヒテの問題構成との違いを明確にし、彼独自の自然観形成を神との関係において提示したものである。一言で言えば、その展開は自然を次第に神による創造とするものであることの確認である。 日本宗教学会において「レッシングとシェリングの自然的宗教について」と題し、口頭発表を行った。この発表は、ドイツ観念論の父と言われるレッシングが理神論に対し、いかなる態度を取り、どのような自然的宗教を考えていたか、をシェリングの唱える自然的宗教と比較したものである。 日本宗教学会で発表した原稿に大幅な加筆をし、論文「レッシングとシェリングにおける自然的宗教について」として弘前大学人文学部紀要『人文社会論叢』第29号に掲載した。この論文は、レッシングの神学・哲学論文を網羅するとともに『賢者ナータン』など彼が宗教に言及しているものを取り上げ、自然的宗教史におけるレッシングの位置づけをし、その上でレッシングが考える自然的宗教はいかなるものかを解明する。それとともに、シェリングの考える自然的宗教との差異を検討し、それらが、両者の死生観とどのように関係しているかを論じたものである。 ヘーゲル『精神現象学』、『宗教哲学講義』の解読ならびに分析を継続し、またヘーゲル研究者の座小田豊氏や藤田正勝氏から示唆を受けることにより、研究に大きな進展を見ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドイツ観念論思想と関係する自然的宗教論の研究を纏め発表することができたため、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年は自然的宗教思想の流れを辿り、シュライエルマッハーの自然的宗教に関する考え方を纏め、日本宗教学会で発表する。 ようやく理解の糸口を見つけたヘーゲル哲学研究を深めるため、座小田氏や藤田氏との連携を密にし、ヘーゲル哲学における哲学と宗教との関係について重点的に研究を行う。そして当初の目的を達成することにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度シュライエルマッハーの事蹟を研究するためにドイツのハレを訪れた際、そこでたまたま墓所の栄枯盛衰を目にすることができ、今まで書物の中でのみ考えていた生と死の問題を極めて身近に感じることができた。この事例がハレのみでは無いことを確認するとともに、機材を購入して写真にその状態を納めることにする。 シュライエルマッハー全集を継続して注文したが、一部版元品切れのため購入できず、研究費を全額使用することができなかった。
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