2012 Fiscal Year Research-status Report
「もの」と「場所」の霊性の生成に関する宗教人類学的研究
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23520082
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
長谷 千代子 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 講師 (20450207)
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Keywords | 国際情報交換 / 中国雲南省 / 文化人類学 / 宗教 / 観光 |
Research Abstract |
本研究の目的は、中国と日本の事例研究を通して、現代的状況において「もの」や「場所」の霊性が生成するメカニズムの解明を目指すことである。方法としては、A徳宏タイ劇の劇神と舞台、B,今津人形芝居の人形と舞台、C,徳宏上座仏教の仏像と上座仏教寺院、D,聖遺物と仏塔、E,観音像と観音寺、F.シャーマンとその集会、という事例についてデータを収集し、それらを総合的に考察して結論を出す。 このうち、Aについては、徳宏タイ劇の戯曲「シャンムーン」の翻訳と解説を書き上げ、『シャンムーン:雲南省・徳宏タイ劇の世界』と題した書籍の出版準備を完了した。3月にはその内容の一部を西日本宗教学会で発表した。Bについては、今津に関する基礎調査報告「今津の四季」が、『福岡市史:春夏秋冬』に掲載・出版された。ひき続き人形芝居の歴史を調査中であり、その成果は来年度出版予定の『福岡市史:人と人々』に掲載される予定である。Cについては、調査結果を中国語でまとめ、「作為観光資源的宗教建築:関于雲南省徳宏州芒市タイ族南伝上座部仏教的考察」と題して中国の学術雑誌『西南辺疆民族研究』に投稿し、2012年第十輯に掲載された。同じテーマについて日本語でまとめた論文も近々出版される予定である。Eについては、8月に基本的な調査を終え、論文執筆にとりかかるところである。すでに日本文化人類学会第46回研究大会で発表し、報告書を作成した。DとFについては8月に調査を行い、今後も引き続き調査を継続する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標は、①Aについては戯曲の翻訳・解説書の出版原稿を完成させる、②C,Dについては建築関係の研究者の協力を仰ぎ、これまで集めた資料を整理し、現地調査の準備をする、③Bについては基本的な参与観察を継続する、④その他の事例については随時取り組む、だった。 このうち、①は目標を達成し、②のCについては中国語で中国の研究雑誌に論文を発表することができた。④のうち、課題Eについても報告書を書いており、③も論文が作成できる程度のデータはほぼ集めている。DとFの課題については特に目に見える成果は残せなかったが、調査データは蓄積しつつあり、特に滞っているわけではない。こうしたことから、おおむね順調に進展していると判断してよいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
もともとの計画では、平成25年度の計画は、①C,D…前年の準備に基づき、現地調査を行う、②A…これまで収集したデータと資料の整理、分析を行う、③B…基本的な参与観察を継続し、資料を整理する、④その他の事例については随時取り組む、となっている。このうち、Aについては具体的な調査がかなり進展したので、平成26年度の課題としていた理論研究に、予定を早めて移行していきたい。課題Eについても、予定より早くデータがそろったので、早めに論文を執筆したい。できれば英語で英語圏の雑誌に投稿したい。それ以外は、当初の計画通り進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は間接経費を含めて50万円となっている。計画としては、直接経費の約半分を中国での現地調査の旅費に使用する。また、資料とデータ整理のため、研究補助者の短期雇用に人件費・謝金として全体の約30%、残りを図書購入などの物品費と考えている。
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Research Products
(4 results)