2013 Fiscal Year Research-status Report
「もの」と「場所」の霊性の生成に関する宗教人類学的研究
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23520082
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
長谷 千代子 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 講師 (20450207)
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Keywords | 国際情報交換(中国雲南省) / 文化人類学 / 宗教 / 観光 |
Research Abstract |
本科研の狙いは現代における「聖地」の意義を探ることであり、現在はその考察の土台となる具体事例に関する個別調査の仕上げに入った段階である。今後はこれら個別の事例のなかから総合的に考察・補足調査すべきテーマをしぼり、結論を導き出すことが課題となる。 前年度までに収集した資料が予想以上に膨大であったため、当該年度の中国での現地調査は現状確認程度の最低限のものに留めて、資料の整理と分析に力を入れた。国内のフィールドは住居の近くを選んでいるので、休日等を利用して長期的な調査を継続した。 本科研で取り組んでいるA~Fの6つの課題のうち、A「徳宏タイ劇の劇神と舞台」に関する成果は書籍『シャンムーン:雲南省・徳宏タイ劇の世界』(長谷千代子訳著、岳小保共訳、2014、雄山閣)として出版した。B「今津人形芝居の人形と舞台」については、現地調査を終えてほぼ脱稿しており、次年度中に『福岡市史:人と人びと』の一部として出版される予定である。2013年10月26日に行なわれた九州人類学研究会オータムセミナーでは「今津人形芝居の舞台はいかに成立するか」と題して成果の一部を発表した。C「徳宏上座仏教の仏像と上座仏教寺院」に関する研究成果は、論文「観光資源化する上座仏教建築:雲南省徳宏州芒市の景観変容のなかで」として、『中国の民族文化資源:南部地域の分析から』(武内房司・塚田誠之編、2014、風響社)に収録・出版された。E「観音像と観音寺」については、基本的な調査を終え、論文作成に取りかかっている。次年度に国際学会で発表し、その後、国内か国外の学術雑誌に投稿する予定である。D「聖遺物と仏塔」ならびにF「シャーマンとシャーマンの集会」については、調査の継続が必要な段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度中に、書籍一冊と論文1本を発表できた点で、目に見える成果としては十分なものが出せたと思う。資料的にも予想以上に大量に集まっている。心配なのは、そのためにかえって資料整理と分析が追い付かないことと、個々の事例研究がそれぞれ独自の展開をしてしまい、「聖地」研究としてまとめるのが難しくなりつつあることである。研究の進展によって以前とは異なる問題点が浮上してくるのは決して悪いことではないと思うが、当初の計画に照らして「順調」と言えるかどうか、判断に迷う面もある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究も後半にさしかかって来たので、今後は調査よりも収集した資料分析・考察・成果発表へと徐々に重心を移していきたい。これまでの成果を踏まえて、フェティシズム論、アニミズム論、聖地論の理論的考察に取り組む。なお、研究課題F「シャーマンとシャーマンの集会」については、今後調査機会が十分に得られないことが考えられ、また聖地論の考察のために必須の事例でもないため、調査の優先順位を下げ、その分これまでに収集した資料の整理・分析と理論研究に力を入れていく。
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Research Products
(4 results)