2012 Fiscal Year Research-status Report
イブン・スィーナー『治癒の書』に関する比較思想史的研究(2)
Project/Area Number |
23520097
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
小林 春夫 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (70242229)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 英海 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (20349228)
仁子 寿晴 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 研究員 (10376519)
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Keywords | イブン・スィーナー / イスラーム哲学 / 形而上学 / シリア語 / 中世哲学 / アヴィセンナ / 治癒の書 / アラビア語 |
Research Abstract |
本年度は合計6回の研究会を開催した。第57回研究会(2012年4月29日(日)10時~18時)、第58回研究会(2012年5月26日(土)10時~18時)、第59回研究会(2012年10月21日(日)10時~17時)、第60回研究会(2012年11月18日(日)10時~17時)、第61回研究会(2012年12月16日(日)10時~17時)、第62回研究会(2013年3月31日(日)14時~18時)。 これらの研究会においては『治癒の書』(形而上学)の精読を継続する傍ら、科学史、中世哲学などの専門家も迎えて同テクストの思想的背景ならびにその影響について、ギリシア語、シリア語、ラテン語、中国語世界を視野に入れて検討した。この作業にあたってはアラビア語刊本は無論のこと、Pocock 125写本(オックスフォード大学ボドレイアン図書館蔵)のバリアントを常に考慮し、また16世紀以降に著された注釈(モッラー・サドラー、ナラーギー等)、中世ラテン語訳(12世紀)、現代語訳(Anawati仏訳、LizziniおよびBertolacci伊訳、Marmura英訳等)を適宜参照した。その直接的成果が、「イブン・スィーナー『治癒』形而上学訳注(第一巻第三章)」『イスラーム地域研究ジャーナル』(Vol.5)早稲田大学イスラーム地域研究機構2013年3月(103~136頁)である。 また関連する成果として、研究分担者による論文(高橋英海“Edition of the Syriac Philosophical Works of Barhebraeus”等)や講演(高橋英海、“Translation and Intercultural Relationships - Obserbations on Translations into and from Syriac"等)がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度内に6回の研究会を開催し、それぞれに7時間程度の時間をかけて集中的に討議した。検討したテクストは分量としてはさほど多いとは言えないが、多分野の研究者を交えて活発な議論ができたことは大きな収穫である。また大学院生などの教育の場としても一定の役割を果たしていると考えている。 今年度は研究代表者(小林)がフランス等で海外調査を行い、関連文献や研究者との交流を行った。また分担者を含めて、関連する図書を多数購入し、それぞれの研究に役立てることができた。 直接的な成果である『治癒の書』の訳注についても一章分のみとはいえ、A4版34頁にわたる訳注とアラビア語=日本語語彙を発表することができた。 今後とも通常の研究会を通じて根幹である精読と多面的検討を行うと同時に、論文や口頭発表などでの成果発表に努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)平成24年度に引き続き、定例の研究会を年に数回開催し、テクストの精読と、テクストの成立およびその思想史的影響に関する多面的検討を重ねる。その際には、最新の研究動向を反映すべく、関連文献や研究情報の収集に努め、それを研究会等において随時紹介することとする。 (2)必要に応じて海外を含む調査旅行を行ない、資料の収集や研究者との情報交換等に努める。 (3)研究成果の発表については、今年度も訳注を学術雑誌等に掲載する。平成24年度はその範囲がテクストの一章分に留まったが、今年度は、内容の精度を落とさないことを大前提に、対象とする範囲を増やしていきたい。また分担者(研究参加者)の個別研究を進め、その成果を論文や口頭発表等のかたちで公にしていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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