2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520098
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
上村 直樹 東京学芸大学, 教育学部, 研究員 (40535324)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 真基子 慶應義塾大学, 文学部, 非常勤講師 (30572078)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | アウグスティヌス / 教父 / キリスト教 / 聖書 / 聖書解釈 / パウロ / キリスト論 / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
研究初年度にあたって両研究者は、研究計画にあげられた課題1:アウグスティヌスが、「創世記」とパウロ書簡をどのように解釈したのか;と、課題2:『嘘について』に前後するアウグスティヌスの言語理論が、どのように変化したか(あるいは変化しなかったか)を考察することに着手し、その成果を国内外の学会において発表した。また、これまでの研究成果を公刊することによって、今後の研究の方向を明確にすることに取りくんだ。 研究代表者・上村は、2011年5月カナダで開かれた教父学会年次研究集会において、「創世記」1:26-27解釈の問題性について発表し、本研究計画が対象としている『告白』先行段階において、アウグスティヌスがすでに「創世記」冒頭解釈の基本的な枠組みを構築していたことを明らかにした。さらに、8月イギリスで開かれた国際教父学研究集会でパウロ書簡解釈に関する発表を行なった。そして、年度末オーストラリアカトリック大学の初期キリスト教研究センターで開かれた研究集会に参加し、研究の進行状況をレポートするとともに、海外研究協力者Pauline Allen教授との意見交換を行なった。 研究分担者・佐藤は、アウグスティヌス『嘘について』において展開している「嘘」の成立と人間の志向性を結びつける独自の理解が、『告白』では「嘘」から免れない者としての人間観へ深化し、そのキリスト論に影響していることを明らかにした。そして、その成果を『中世思想研究』第53号に投稿・公刊した。さらに、アウグスティヌス初期から中期にいたる言語理論の発展が、そのキリスト論に密接に関係していること、また人間の言語的営みが救済に寄与していることを明らかにし、11月福岡市で開かれた中世哲学会大会において発表した。大会に参加した各方面の研究者との意見交換から得られた知見をふまえて分析を進め、その成果を年度末に論文として提出する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、当初設定された研究課題のそれぞれについて、アウグスティヌスの「創世記」とパウロ書簡解釈の『告白』以前における実態を考察するとともに、アウグスティヌスの言語論の進展が、『告白』において昇華を遂げている点を解明することができた。そして、聖書解釈が具体的にどのような仕方で、人間の言語行為の理解に関与しているかという問題についても充分な検討を進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画によれば、今年度からは、研究代表者と分担者のこれまでの研究成果をすり合わせ、その成果を国内外の学会において発表する予定であった。上述のとおり研究計画が順調に進展しているので、研究代表者・上村はまず、アウグスティヌスのパウロ書簡註解群の分析を継続し、その成果を北米教父学会とカナダ教父学会のそれぞれの年次研究集会において発表し、意見交換を行なう予定である。そして、人間論の考察を進めるとともに、その成果を研究分担者に提供し、共同で討議する予定である。研究分担者・佐藤は、言語論に基づくアウグスティヌスの人間観の形成の背景には、旧約聖書と新約聖書を関係づけて解釈した結果、獲得された彼の創造思想があることを見出した。そこで、代表者の研究成果を援用しつつ、アウグスティヌスの創造思想への影響に焦点を当てて研究を推進する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アウグスティヌスによるパウロ書簡解釈の分析において、言語行為に関する用語法分析に先立って、創造思想の分析が必要であるという新たな知見を得た結果、平成23年度内に購入を予定していた書籍、および電子資料の変更と再検討を余儀なくされた。また、予定していた中世哲学会大会参加の旅費は、学会から幹事報酬として手当てされることが急遽決まったため、未使用となった。 本年度は、当初予定していたアウグスティヌスの言語論に関連する消耗性図書(22万円)に加え、聖書学、創造思想分析に関連する消耗性図書およびPCソフトの購入に30万円を使用する計画である。また、当初の予定どおり、研究発表に伴う旅費(APECSS、京大中世哲学研究会)10万円、PC関連消耗品費10万円、文献複写等その他経費15万円を使用する。
|
Research Products
(8 results)