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2012 Fiscal Year Research-status Report

近代日本と中国における「哲学」概念の成立過程の比較研究

Research Project

Project/Area Number 23520105
Research InstitutionGakushuin University

Principal Investigator

高柳 信夫  学習院大学, 付置研究所, 教授 (80255265)

Keywords哲学 / 近代日本 / 近代中国
Research Abstract

平成24年度においては、平成23年度の成果を基礎としつつ、主として日本と中国における近代アカデミズムの中で「哲学」が一つの学科として成立してゆく過程において醸成されていった「哲学」観や、「哲学」と他の諸学との関係、さらに「哲学」の社会的役割等を検討するための資料収集とその内容分析を行った。
具体的には、日本については、井上哲次郎や外山正一(さらにアカデミズムと異なる系譜の思想家として中江兆民)らを分析対象とし、中国の胡適、傅斯年らとの比較を行った。その結果、日本においては、西周らの「哲学」導入以降、その具体的内容は変遷を経たものの、「哲学」と儒教等との親和性や“「諸科学を統轄する学」としての「哲学」”というイメージは継承されていたため、日本への西洋の先進的学術の早期導入を目標とした明治政府にとって、「哲学」は自らと対立するものと意識されることは少なく、また、日本の初期アカデミズムにおける「哲学」も、政治権力を補完する社会的機能を果たしていたことが明らかになった。
それに対して、中国における「哲学」は、儒教を中心とした中国の伝統思想との異質性が注目されることが多く、清末の教育制度改革以来、政治権力側には「哲学」の「危険性」への懸念が存在していた点や、中華民国成立以降の政治権力とアカデミズムの関係は日本よりも緊張度の高いものであったために、「哲学」も現有の政治権力に対する批判的な機能を果たしてきた点など、日本と異なる独自の特徴を持つことも示された。
このような「哲学」の社会的機能については、従来より、日本および中国の事例について、個々の事実自体は指摘されてきていたものの、両者の比較を通じてそれぞれの特質とその背景がよりクリアなものになった点に、本研究の成果の意義があるといえるであろう。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

平成24年度の活動の結果、日本では、アカデミズム成立期における「ディシプリンとしての哲学」確立以降の「哲学」が、社会の現状等への「批判」性をさほど発揮することはなく、明治政府のめざす方向性と協調しつつ(ただし、このことは「哲学」が専ら政治権力に従属していたということを必ずしも意味しない)、主として「近代国家としての日本」の確立・強化という社会的機能を果たしていたのに対して、中国においては、政治権力とアカデミズムとの一種の「緊張関係」を背景に、「哲学」研究は、比較的「批判」的機能を果たす傾向が強かったことが明らかにされた。
このような形で、日中間の比較研究を通してそれぞれの社会における「哲学」の機能の独自性が示されたという成果から見て、申請時に掲げた“日本と中国における「哲学」の「独自性」の検討や、そうした「独自性」についての日中間の比較研究”という目的を比較的順調に達成しつつあると考えられる。

Strategy for Future Research Activity

平成25年度においては、平成23・24年度に蓄積された成果の基礎の上に、研究範囲を日本と中国における「哲学史叙述」のそれぞれの特徴を検討する。
すでにこれまでの研究によってある程度明らかになっているように、日本における「哲学」受容は、西洋の近代的学問の急速な導入への全社会的な合意が見られたという背景の下、特に大きな摩擦もなく進行し、さらに、日本や東洋における「哲学」の存在についても、疑問が持たれることが少なかった。
それに対して、中国はその長い学問的伝統の影響もあり、「哲学」の導入が必ずしもスムースに行われた訳ではなく、また、「中国哲学」なるものが成立するか否かといった点が大きな論点となった。
もちろん、こうした概括に収まらない言説が日本・中国ともに存在することも確かであるが、平成25年度においては、上述の図式を基本として、日本と中国における自国やアジア地域についての「哲学史叙述」(あるいは、あえて「哲学史」という名称を拒否する学術史叙述)を比較検討し、その特徴を明らかにしてゆく。
同時に、平成25年度は、研究計画の最終年度であるので、3年間の研究の総括を行い、成果報告としてとりまとめる。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

引き続き、日本・中国・西洋の近代思想・哲学関連の書籍・資料の収集のために使用する。なお、必要に応じ、平成25年度内に、1週間程度の関西方面での資料調査を行うことを予定。

  • Research Products

    (1 results)

All 2013

All Journal Article (1 results)

  • [Journal Article] 中村正直と厳復におけるJ・S・ミル『自由論』翻訳の意味2013

    • Author(s)
      高柳信夫
    • Journal Title

      石川禎浩・狹間直樹(編)『近代東アジアにおける翻訳概念の展開』(京都大学人文科学研究所)

      Volume: 1巻 Pages: 55頁~81頁

URL: 

Published: 2014-07-24  

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