2013 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本と中国における「哲学」概念の成立過程の比較研究
Project/Area Number |
23520105
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
高柳 信夫 学習院大学, 付置研究所, 教授 (80255265)
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Keywords | 哲学 / 近代日本 / 近代中国 |
Research Abstract |
平成25年度は、平成23・24年度に蓄積された成果の上に、主として日本と中国における初期の「哲学史叙述(日本における日本哲学史、中国における中国哲学史等)」の特徴を検討した。 日本における初期の「哲学史叙述」(井上哲次郎、井上円了等)の特徴の一つとして、「哲学」がすでに普遍的に確立した一つのディシプリンであることを前提として、その各分野(「純正哲学(形而上学)」「論理学」「倫理学」等)について、該当する日本やアジアの思想的遺産の諸要素をはめ込んでいくというスタイルが一般的だった点がある。 それに対して、中国では、そもそも中国思想の歴史を「哲学史」として叙述することの可否が問題となっており、例えば、近代における中国史の書き換えに大きく貢献した梁啓超は、1900年代には、主として「中国学術史」という語を用い、1920年代には、より明確に、「哲学」は「知」を重視する西洋固有の学問形態であり、「人としていかに生きるか」を主題としてきた中国の学問とは質的に異なると主張した。 また、近代中国史上、初めて大きな社会的影響を与えた中国哲学史の著作である胡適『中国哲学史大綱(上)』は、古代中国の思想家の「邏輯(ロジック)」のあり方を中心に叙述を進めるという特異な形態をとり、形而上学的な要素などを哲学史叙述から排除した。 彼らに共通するのは、日本のように「講壇哲学」的ディシプリンを普遍的なものとして前提とせず、「哲学」という学問のあり方を相対化もしくは再検討する姿勢である。 本年度の成果も含め、3年間の本研究全体を通して得られた近代日本・中国の「哲学」概念の導入・定着期における諸問題についての知見は、個別的には従来の研究においても指摘されているものもあるが、日中の比較という新たな視点を導入することによって、双方の「個性」がより明確にされており、この点にこそ、本研究の意義があると思われる。
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Research Products
(2 results)