2011 Fiscal Year Research-status Report
「聖廟文学」の思想史的研究―平安朝文人の天神信仰―
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23520108
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
吉原 浩人 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80230796)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 聖廟文学 / 天神信仰 / 菅原道真 / 大江匡房 / 文人貴族 / 大宰府 / 慶滋保胤 / 源相規 |
Research Abstract |
本研究は、菅原道真の霊を天神として祀る宗教施設、すなわち安楽寺(太宰府市)・北野社(京都市)・吉祥院(京都市)の三聖廟に捧げられた、詩序・願文類を「聖廟文学」と呼び、表現の位相や信仰の背景を精査することで、その思想史的意義と、平安朝文人貴族の天神信仰の実態を闡明することを目的とする。本年度は、以下の成果を刊行・発表し、あるいは研究を進展させた。 1「聖廟文学」と密接に関連する、慶滋保胤の六波羅蜜寺結縁供花会詩序について、中国西安市・西北大学で開催された和漢比較文学会第四回特別研究発表会において研究発表を行い、論文・訳註としてそれぞれ公刊した。2菅原道真以下の文人が特別の存在として尊崇した白居易が、神として祀られる経緯について闡明した論文を公刊した。ここに、同じ文道の神とされた、白居易と菅原道真の類似性を読み取ったが、それを証明するためには、さらに天神信仰の実態を精査する必要があろう。3大宰府天満宮・観世音寺・大宰府跡・竈宮、さらには福岡市の鴻臚館跡・筥崎八幡宮などへの実地踏査を行い、資料を蒐集した。4「聖廟文学」は、『本朝文粋』『本朝続文粋』所収の詩序・願文九篇が中心となるが、それらの詳細な訳註に着手した。その嚆矢となる、源相規「初冬陪菅丞相廟同賦籬菊有残花詩序」(『本朝文粋』巻十一[336])については完成に近づいており、平成24年度中に、学会発表・論文・訳註の形で、成果を報告できよう。5天神信仰と並び称される聖徳太子信仰についても、日本・中国で研究発表を行い、両信仰の関連性についても考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の交付申請書に述べた内容について、実地踏査地点を吉祥院天満宮から大宰府天満宮に変更したが、その他についてはほぼ遅滞なく達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
あらかじめ立てた計画に従い、註釈・論文作成と、実地踏査を並行して行う。平成24年9月には、台湾大学で開催される和漢比較文学会第五回特別研究発表会において、「天神信仰史上における源相規安楽寺聖廟詩序」と題し発表する予定。また、東京・天津・杭州などにおける国際会議においても、本研究に関連する口頭発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記、台北市・台湾大学における和漢比較文学会第五回特別研究発表会に出張して、口頭で研究発表を行う。国内では、吉祥院天満宮の実地踏査を行う。前年度に購入したデータベースを活用し、学生の協力を得ながら諸資料の入力を行い、註釈を進める。
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