2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520115
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
須藤 弘敏 弘前大学, 人文学部, 教授 (70124592)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 阿弥陀来迎図 |
Research Abstract |
○ 23年度は当初想定していた国外の調査1回、国内の調査2回が、研究者及び相手先双方の事情で24年度に延期せざるを得なかった。そのため、新たな調査を行う以前に既調査データの精細な再検討、過去に撮影していたフィルムデータの画像データ化を主に集中して行った。その結果、今後調査すべき対象や調査方法についてきわめて有用な認識を得ることができた。○ あわせて、文献資料や関連諸学における研究を網羅的に再検討し、本研究の基本的な視座を一部訂正し、より本質的な課題がどこにあるのかが明確となった。具体的には、本研究の対象である、知恩院蔵阿弥陀二十五菩薩来迎図について、過去の研究ではみな知恩院あるいは浄土宗の歴史の中に位置づけようとしてきていたが、それが誤りであるという重大な認識を得ることができた。これは、知恩院本の研究にまったく新しい視座と本質的な課題設定を要請するもので、本研究の重要な進展として特筆できる。○ 絵画としてみた場合、知恩院本を理解する重要な鍵が山岳表現にあることは言うまでもないが、これを東アジア全体の絵画との比較の中で検討すべき事を再認識した。23年度末に行った調査でボストン美術館蔵法華堂根本曼陀羅を熟覧し、この仏画における山岳の意義と表現手法が実は5世紀も後の知恩院本に通底していることを確認し、東アジアの長く豊かな宗教絵画および風景絵画の展開の中に本図を位置づけるべきことを確認できたことは大きな成果である。○ 以上のように、23年度は基盤的な研究に終始したが、逆にそのことが功を奏してこれからの実地調査に向けての意識や課題を確立させることができ、十分な準備が整ったといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
23年度は、公私の事情(学内業務、家族の死亡)により長期の出張が不可能な状況だったことと調査相手先の事情により、国内外の調査あわせて3回を実施できなかった。遅れたこれらの調査は24年度中に実施できる準備は整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の視座と枠組みが整ったことを受け、知恩院本そのものと主要な比較作例を国内外で調査を行い、そこで得られた知見を元に本図の新たな位置づけに関わる研究を精力的に進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内調査3回(京都・東京ほか)、国外調査1回(シカゴ・ニューヨーク)と画像及び史料データ入力作業、一部の機材補充が主な支出となる。
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