2013 Fiscal Year Research-status Report
アントワーヌ・ヴァトーの生きているかのような彫刻表現の生成と意義について
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23520118
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Research Institution | Aichi Sangyo University |
Principal Investigator |
杉山 奈生子 愛知産業大学, その他の研究科, 准教授 (30547493)
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Keywords | ロココ美術 / アントワーヌ・ヴァトー / 雅宴画 / 彫刻 / 美術理論 / ピュグマリオン / フランス / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
本研究は、従来アプローチが困難であったヴァトーの雅宴画解釈を、作品自体とともに、作品を取り巻く文化的・社会的コンテクストからの資料を用いて試みるものである。具体的には、ロココの創始者とも称され、18世紀フランスを代表する画家ジャン=アントワーヌ・ヴァトー(Jean-Antoine Watteau,1684-1721)が創始した絵画ジャンル、雅宴画の中に描かれた裸婦彫刻モティーフに対する意図を、制作者であるヴァトーおよび受容者である当時の美術愛好家に関する資料から浮き彫りにし、美術の主要な役割が公的なプロパガンダから私的な鑑賞へと変容しつつあった18世紀フランス美術史・文化史の一端を明らかにするものである。 研究方法として、①ヴァトー自身に関するテクスト(油彩画・素描・文字資料)の再検討、②ヴァトーの雅宴画に描かれた彫刻モティーフに関わるコンテクストおよび18世紀フランス美術史・文化史の把握、③ヴァトーの彫刻表現の生成過程に関わるピュグマリオン神話や古代彫刻、庭園を主題とした油彩画・版画の収集・分析を計画した。 上記の目的・計画に則り、初年度の研究方法②、平成24年度の研究方法①に加えて、当該年度には研究方法③を実施した。ヴァトーの基本的かつ最重要の一次資料として、友人であり美術愛好家のケリュス伯によるアカデミー講演草稿(ソルボンヌ大学附属図書館蔵)の調査結果の一部を昨年度に続き論文として公刊した。また、美術理論、美術愛好家、サロン文化、演劇に関する文献を精読し、社会史・文化史的な背景の把握に努めた。さらに、ジャックマール=アンドレ美術館の展覧会「ヴァトーからフラゴナールまで:雅宴画」にて、ヴァトーおよび同時代の雅宴画家の作品を調査した。ルーヴル美術館絵画資料室では、ヴァトーの絵画に関する資料およびヴァトーが描いた裸婦彫刻モティーフの生成に関連する視覚資料を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の3年目にあたり、申請した予定項目をほぼ遂行した。フランスでの現地調査については、昨年度に引き続き今年度も予定通り実施したが、初年度に予定していたものの実施できなかった。そのため、研究計画の達成度は上記の通りとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の「研究実績の概要」に提示した研究方法①②③に関して、平成23年度は②を中心に、平成24年度は①を中心に、平成25年度は①②③を実行したので、①②③を継続発展させたい。 研究方法①(ヴァトー自身に関するテクストである油彩画、素描、版画に関連するデータの再検討)については、作品目録とともに、作品の所蔵先であるルーヴル美術館などの現地での調査を行う。研究方法③(ヴァトーの彫刻表現の生成過程に関わる、ピュグマリオン神話や古代彫刻、庭園や演劇を主題とした油彩画、版画のデータ収集・分析)については、関連資料をパリのフランス国立図書館などで調査・分析するとともに、古代やルネサンス以降の絵画、彫刻を、CD-ROM、作品目録および欧米の主要美術館での調査を行い、ヴァトーの裸婦彫刻モティーフの視覚的着想源を明らかにする。研究方法②(ヴァトーの雅宴画に描かれた彫刻モティーフに関わるコンテクストおよび18世紀フランス美術史・文化史の把握)については、関連文献の精読を継続実施する。 文献の精読および現地調査で収集した資料をもとに分析を行い、研究成果を論文やデータベースとして公表していきたい。完成されたデータベースについては、ホームページで公開し、専門家に限らず広く利用できるようにし、さらに写真なども含めて何らかの印刷物に付したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由は以下の2つである。 理由①:平成26年3月14-20日に実施したフランスでの現地調査(ジャックマール=アンドレ美術館、ルーヴル美術館等)のために使用した旅費457,755円は、速やかに精算手続きをしたが、年度末の時期であったため、次年度に計上された。 理由②:初年度の平成23年度に予定していた海外での現地調査については、新たに出版されたヴァトーに関する文献資料を精読してから実施することが有効であると判断し、実施しなかったため、計上していた旅費約40万円を繰り越すこととなった。平成24,25年度については、予定通り海外調査を実施している。 海外(フランスなど)での調査を実施し、そのための旅費に使用する予定である。
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