2013 Fiscal Year Annual Research Report
アジア近代美術における「ローカルカラー」と「アイデンティティ」形成
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23520124
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
後小路 雅弘 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (50359931)
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Keywords | 国際研究者交流 インドネシア / 国際研究者交流 台湾 / 国際研究者交流 韓国 / 国際情報交換 タイ / 日本軍政 / 官設美術展 / ローカルカラー / ナショナル・アイデンティティ |
Research Abstract |
最終年度には、インドネシア調査を行い、インドネシア随一の美術史家であるジム・スパンカット氏にインタビューし、氏の協力を得て貴重な関連資料を数多く収集することができた。また、タイの美術史家ソンポーン・ロドボーン氏にもインタビューを行った。またフィリピンの美術史家パトリック・フローレス氏と意見交換することができた。前年度に行ったシンガポールの美術史家T.K.サバパシー氏へのインタビューとあわせ、東南アジアの主要な美術史研究者にインタビューを行い、あるいは意見交換し、日本の軍政下にあった東南アジアで開催された官設公募美術展において求められた「ローカルカラー」が、支配者権力の期待に沿うものでありながら、同時に民族主義の発露でもあり、戦後独立したアジアにおける「ナショナル・アイデンティティ」形成へと引き継がれるという複雑な関係を、東アジアとの比較をふまえ、ある程度明らかにすることができた。 また、一次資料として、日本軍占領下に発行された邦字新聞(『ジャワ新聞』『ビルマ新聞』『昭南新聞』『マニラ新聞』)、英字新聞(『Syonan Times』『The Tribune』、華字新聞(『昭南日報』)に加え、現地発行の雑誌(『Djawa Baroe』等)や日本の雑誌(『写真週報』等)も併せて読んで、美術関連資料を複写収集した。これらの資料により、これまでほとんどわかっていなかった東南アジア各国の日本軍政下における官設美術展をはじめとする美術活動について把握することができ、いくつかの論文(「日本軍政と東南アジアの美術」『哲学年報』72輯 九州大学人文科学研究院)た。 さらに東アジアとの比較の点では、国際シンポジウム「異国と故郷」(台湾大学)での発表と討議、福岡アジア美術館の「官展にみる近代美術」展の図録に示され、関連して開催された研究会において、研究成果を共有するとともに、深めることができた。
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