2012 Fiscal Year Research-status Report
在日欧米人ネットワークと戦後日本美術の評価―英文ジャーナリズムを中心に
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23520125
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
桑原 規子 聖徳大学, 人文学部, 准教授 (90364976)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五十殿 利治 筑波大学, 芸術系, 教授 (60177300)
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Keywords | 日本美術史 / 美術批評 / 占領期 / 英字新聞 / CIE / 国際情報交流 / アメリカ |
Research Abstract |
平成24年度は以下のような資料収集・調査・研究会を国内外で行った。 まず国内では、9月の研究会で若手研究者を招聘してGHQ/SCAPの文化政策と美術について話題提供を受けるととともに、戦後の恩地孝四郎とアメリカ人コレクターの関係について報告(桑原規子)、議論を行った。さらに10月には、戦後アメリカ美術を専門とする研究者との情報交換を行い、戦後日米間の美術交流について新たな視点を得た。このような研究組織以外の研究者との会合を重ねることによって、「在日欧米人」のネットワークのみならず、「来日欧米人」のコネクションも視野に入れた研究へと広がりが出てきている。 また、前年度に引き続いて英字新聞記事の収集およびデータベース化にも重点を置いた。特に、所在不明であったArt Around Town(中尾信発行)についてはその総目次コピーを入手することができたため、寄稿者名から在日欧米人リストの充実が可能となった。ただし、掲載記事については未だ約半分しか入手できていないため、平成25年度も追加・更新していく予定である。これらの作業を通じて、美術批評に携わった欧米人が注目した日本人作家と作品がさらに明らかになることだろう。 平成24年11月に行った海外調査(ミネアポリス・シカゴ)では、ミネソタ大学美術館所蔵のワレン・マッケンジーらの陶芸作品、北イリノイ大学所蔵の日本美術関係資料(トビン・コレクション)を調査した。ミネソタ大学では、戦後、「民芸」の理念に基づいて制作し、その思想を啓蒙しているマッケンジーについて調査、一方北イリノイ大学では日本版画のコレクターで、日本近現代版画史の研究書出版をめざしていたジェームス・トビンと日本人作家・画商との往復書簡、海外で開催された展覧会目録等を中心に収集。来年度以降、これらの資料や情報をもとに、戦後日米関係に関する研究をさらに発展させる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、春と秋に予定していた研究会が外部講師との日程調整がつかなかったため1回となってしまったが、研究会とは別に戦後アメリカ美術の研究者と意見を交換するとともに、今後の研究協力(25年度開催予定のシンポジウムへの参加)の可能性を探ることができた。また、英字新聞記事(Japan Times, Asahi Evening news, Pacific Stars and Stripes, Art Around Town)の収集も継続、データベース化も進展している。CIE図書館に関する資料については手がかりが見つかり、研究が進行中である。 ただ、Art Around Townに関しては、まだ半数の記事の所蔵が不明であるので、今後発掘する必要がある。また、英文資料の収集に時間を要したため、日本の美術批評との比較を行うまでには至っておらず、今後の課題である。 在日欧米人リストの作成に当たっては、さまざまな研究者から情報が寄せられ、厚みが増している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究を推進するに当たっては、以下の方策を考えている。 1.平成24年度までに収集できなかった英字新聞・雑誌の発掘とデータベース化の継続、完成。 2.民間情報教育局(CIE)およびCIE図書館と戦後美術の関係について、引き続き調査。3.1945~1965年の日本人批評家による美術批評の収集、英字新聞掲載の美術批評との比較、検討。 4.10月に国内研究者、海外研究協力者を招聘し、「戦後美術」に関するシンポジウムを開催する。 5.それぞれの研究メンバーが、これまでの調査を踏まえ、論文発表をめざす。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は引き続き新聞・雑誌資料を収集するため、相応の印刷代、資料整理やデータベース化のための人件費が必要となるだろう。 また、10月20日に筑波大学文京校舎でシンポジウムを計画しており、その際、国内研究者(神戸在住)と海外研究協力者(シドニー在住)を招聘するつもりである。したがって講師のための旅費・宿泊費・謝金、会場費、パンフレット作製費なども計上している。
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Research Products
(2 results)