2013 Fiscal Year Annual Research Report
フランス古典主義の成立に関わるリシュリューの政策と画家プッサンの役割
Project/Area Number |
23520126
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
望月 典子 慶應義塾大学, 文学部, 講師 (40449020)
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Keywords | ニコラ・プッサン / 17世紀フランス美術 / 古典主義美術 / 古代美術 / リシュリュー枢機卿 |
Research Abstract |
本研究は、ローマを拠点に活動していたフランスの画家プッサンが、17世紀フランス「古典主義」美術の成立に果たした具体的な役割について、ルイ13世の宰相リシュリュー枢機卿の芸術政策に対する画家の関与から解明することを目的としている。初年度は、リシュリューの古代美術蒐集活動の実態、それに関わっていたローマの美術家とプッサンの交友関係、及び同時期のプッサンの作品分析を行ない、リシュリューのフランスへの古代美術移入計画を画家が早い時期から知り得たことを確認した。2年度は、フランス絶対王政のプロパガンダとして重要な意味を担うルーヴル宮大回廊装飾事業がプッサンに委嘱された経緯、古代美術複製事業での画家の役割、ローマに戻った後にプッサンがパリの愛好家に向けて描いた作品群と古代美術との関係について分析した。 最終年度は、これまでの成果を報告しつつ、フランス古典主義の展開に大きな役割を果たしたルーヴル宮大回廊の装飾(現存せず)の調査を継続し、図像学上のプログラムとプッサンの手法を検討の上、その後のフランスの室内装飾への影響を視野に入れた総合的な分析を行なった。また、後年の王立絵画彫刻アカデミーにおける古代美術を範とする規則の体系化と、プッサンが与えた影響の解明に関連し、フランス古典主義の理論家R. F. ド・シャンブレーが画家C. エラールに依頼し集成した古代彫刻の測量付素描集(パリ、エコール・デ・ボザール、PC. 6415)を調査した。この素描にはプッサンの関与が推測されている。 プッサンの古代美術に対する態度・関わりには、絵画制作のための美学的なアプローチと、フランスへの古代美術移入の仲介という実際的なアプローチの二つの側面がある。本研究は、両側面から分析を行なうことに独自性があり、研究期間を通じて、フランス「古典主義」美術の本源として画家が果たした具体的な役割の解明に資する調査を実施できた。
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