2011 Fiscal Year Research-status Report
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23520128
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
津上 英輔 成城大学, 文芸学部, 教授 (80197657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧野 圭子 成城大学, 文芸学部, 教授 (50275103)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | souvenir / 観光 / 消費 / 消費者行動研究 / 美学 |
Research Abstract |
本年度の研究は次の3つを課題とした.課題別,分担者別に成果を述べる.1.感覚的快と感性的快との美学的区別:津上がカント『判断力批判』の当該箇所を再検討し,感性的快たる美が何故普遍妥当性を要求するかを確認した.2.Souvenirとおみやげの比較:津上が美学的・理論的考察を行ない,論文「Souvenir ―観光体験の額縁」にまとめた.また牧野は,ハワイと京都で,観光客の選好に関する聞き取り調査を行った.そして,欧米人は日本人とは異なり,置物等の感性的なものを買う傾向があることを確認した.一方,観光地滞在中のオプショナル・ツアー選びにおいては,日本人も欧米人も,感性的な体験を求めていることが示唆された.両者の成果から,souvenirはおみやげと違い,感性的消費の対象であることが確認された.3.東日本大震災による観光者意識の変化に関する調査:津上が2011年5月から7月までの3度の仙台周辺調査結果をもとに,同年10月東北大学での美学会全国大会たそがれフォーラムにおいて「Sensus communis再考:共感に立つ美学に向けて」と題する研究発表を行なった.その中で,東日本大震災を機に人類共同体が姿を現わしたこと,および共感に立つ感性判断が可能であると同時に危険であることを指摘した.この際,課題1.の成果が理論的前提となった.また2012年3月に福島県いわき市で調査を行ない,震災と観光者行動,とりわけおみやげ購買行動の変化に関する調査を行なった.牧野は,東京でも観光地が影響を受けていることに着目し,2011年5月に浅草の三社祭で観察と聞き取り調査を行った.感性的質の観点から結果を検討したところ,例年とは異なる感性的質が生じていることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の3つの課題のうち,1.については上述のとおり確認作業を終え,3.の理論的前提として役立てることができた.2.については,津上が美学の観点から理論的考察を行ない,牧野が消費者の選好に焦点を当てた現地調査を行なった.前者は論文として発表することができた.後者については,さらなる調査および理論的考察を加えてまとめる予定である.3.については,津上が東日本大震災と美学の関係について,実地調査を踏まえた理論的考察を行ない,口頭発表することができた.これは2012年5月中にウェブ公開される予定である.牧野は研究成果を論文にまとめ,2011年9月に『成城文藝』216号で発表した.これは既にウェブ公開されている.しかし当初予定していたストックホルムでの調査(津上)は,国内での調査と考察がより明確な姿をとるまで延期することとした.全体の達成度として「おおむね」を選択する所以である.
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Strategy for Future Research Activity |
当初,平成24年度の研究では,次の3つを課題とする計画であった.1.Souvenirと真正性(authenticity)についての文献調査2.消費に顕著な感性的質の発見3.東日本大震災による観光者意識の変化に関する調査すべて当初の予定どおり進めるが,加えて3.については,平成23年度中の研究において必要性が明らかになったいわき市調査を継続する.また,延期していたストックホルムでの調査を行なう.これを承けて,平成25年度の研究では,とりわけ消費概念の規定に力を注ぎ,ポーランドで開催される国際美学会で津上,牧野ともに研究発表を行なう.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究では,いわき市におけるsouvenirとおみやげの調査を継続し,前年度に予定していたストックホルムでの調査を実施する点が,当初の予定からの変更点である.
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Research Products
(3 results)