2012 Fiscal Year Research-status Report
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23520131
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
佐々木 健一 日本大学, 文理学部, 研究員 (80011328)
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Keywords | 美学 / 藝術 / 自然美 / 創造 / 表現 / 想像力 / 解釈 |
Research Abstract |
激変している美学の状況に対応し、近代と現代の美学の基礎概念の理解を目指す本研究は、1995年刊行の拙著『美学辞典』の大幅増補改訂として結実するはずである。本年は、この著書で取り上げた基礎概念のいくつかについて改訂を試みた。藝術、自然美、創造、表現、想像力、解釈などである。改訂の趣旨は2つあり、旧著において欠けていたものを補うことと、変貌する現代美学のなかでの新しい問題意識を取り込むことである。「藝術」については、近代のイデオロギー的側面(ハイカルチャー性)を強調すること、20世紀後半に現れた定義(不)可能性の議論の検討(これについては、ホラチウス的二元性を以て定義する可能性を提起する)、藝術の終焉論の総括を行った。「自然美」については、1970年代以降に現れてきた理論、普通に環境美学の柱と見なされているものに注目した。それには2つの形態があり、英米のそれとG・ベーメの説である。後者は非対象的な雰囲気という現象に注目するベーメの認識論の一環をなし、自然美の体験に雰囲気的なものを見る。この論点は英米の環境美学のなかにもないわけではないが、英米の議論のなかでは特に認識もしくは知識の契機の議論(特にカールソン)に注目した(これが非自然美的である、とわたしは考える)。「創造」については、特に20世紀の前衛藝術における非工作的な創造に対応する理論が必要で、コリングウッドの説のなかにその表現を見る(この概念が本来発明的なものをベースにしているという説)。「表現」については、表現主義の美学を参照し、クローチェ=コリングウッドの表現説を取り入れた。「想像力」についてはアランの身体的精神としての想像力という考え、サルトルの現象学的分析と憑依の概念に注目した。「解釈」は20世紀の思想の基調としてこれを捉え、ニーチェやヴィットゲンシュタインを起点として、ハイデッガーとガダマーの説を組み込んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進展のペースは自分で見積もったとおりである(多数の文献を自ら読み、理解することが基本なので、そう速くは進まない)。現段階では、新たな知見もメモのかたちでしか残しておらず(講義のかたちで発表してはいる)、原稿にしていない。残りの2年度のなかで、原稿化することが不可欠である、と認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、引き続き旧著の改訂を主たる課題としたい。これまで着手していないもののなかでは、改訂の必要性の高いものとして、「象徴」、「価値」、「批評」、「模倣」を考えている。同時に、これまでに着手したものについても引き続き新資料の渉猟に努めつつ、原稿化を進める。また、新たに取り上げるべき概念として(過去10年ほどの研究でまだ着手していないもの)、「商品」、「感覚・感情」、「遊戯」、「無意識」などに関して、資料収集に努めるつもりである。 なお、本研究は美学史の研究と密接に連動している。これと並行して美学の歴史に関する著作を計画しているので、両者の相関的な効果を活用していることを、付記しておく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(3 results)