2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520139
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
加藤 哲弘 関西学院大学, 文学部, 教授 (60152724)
|
Keywords | 美学 / 美術史学 / ルーモール / ルーモア / 料理術 / 美味学 / ローマ |
Research Abstract |
3年次に予定されていた課題は、ルーモールが「文人」として詩や文学、素描や版画などの領域で発揮した多彩な才能と、その美学や美術史学との関係を解明することであった。この課題の解決のために、今年度は、(1)ルーモールの第一次イタリア滞在をめぐる前年度からの研究成果を、論文「ルーモールのイタリア旅行(1805-06年)―食文化哲学と美術史研究のあいだで」(『人文論究』)において発表するとともに、それに続いて、(2)彼の第二次イタリア滞在にとくに注目して、その際に彼が、ヴァイマールでその才能を見いだしてローマへと同行した若い画家のホルニーを、当時ローマに滞在中であった多くのドイツ語圏からの芸術家や「文人」たちとの交流のなかで、どのようなかたちで教育しようとしていたのかを、彼の旅行記や随筆などのテクスト分析を通じて明らかにした。この第二の成果は、竹林舎から刊行された、佐藤直樹編『ローマ――外国人芸術家たちの都――』に所収の論文「ローマ滞在中のルーモア[ルーモール]――ナザレ派との関連を中心に――」によって公表した。また、2014年2月に行った現地調査では、ローマ市内および、ローマ郊外のオレヴァノにある、ルーモール(および、ローマに滞在中の芸術家や文人たち、とくに風景画家としての教育のためにホルニーを預けたコッホや、後援者として作品制作の支援を行ったオーヴァベック、コルネリウスらの、いわゆる「ナザレ派」の画家たち)が滞在した旅館や教会、修道院を訪れ、彼らが描こうとした理想的風景や宗教的理念がどのようなものであったのかを実地に調査した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究目的は、おもに「文人」としてのルーモールが、風景画制作や小説執筆のなかで、あるいは、若い世代の画家や美術研究者の教育活動、政治的経済的な利害を調整しながら展開した社交活動のなかで発揮した多彩な才能を、美学や美術史学との関係で明らかにしていくことにあった。この点については、予定されていた論文執筆を順調に行うことで、当初の目的は充分に果たすことができた。前年度に取り組んだ「美学」の観点からの研究についても、成果を論文として発表することで、いくつかの重要な補完ができたし、次年度に予定している、一人の人格としての総合的把握という観点からのルーモールについての考察のためにも、とくに彼のローマ滞在中の交友関係を調査する過程で、多くの示唆がすでに得られた。 もちろん一部には、入手できなかった文献があったり、訪問できなかった研究機関や美術収集があったりはした。しかし、それは研究計画の全体に影響を与えるほどのものではない。それらについては、今後も引き続き、入手の試みを継続するとともに、もしうまく都合が合えば、次年度の資料調査と収集計画のなかに組み込んでいく。 以上のことから、全体としては、研究は順調に進展しているということができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策に大きな変更はない。 申請時に計画調書に記載した通り、最終年度となる次年度には、これまで継続してきたルーモールについての調査や分析の結果を、ウェブページなどを利用した成果公開により、同じ一つのコンテクストの中で生きた一人の人間の中で総合する。可能であれば、彼が執筆したテクストのいくつか、とくに『料理術の精神』の日本語訳を完成させて公刊するか、上記のウェブページで公開する。
|
Research Products
(3 results)