2011 Fiscal Year Research-status Report
「鎖国」下の日本における清朝陶磁の受容とその影響に関する調査研究
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23520141
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Research Institution | Kyoto National Museum |
Principal Investigator |
尾野 善裕 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部, 工芸室長 (40280531)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 陶磁史 / 考古学 / 日中交流史 |
Research Abstract |
のべ27日にわたって、彦根城博物館・徳川美術館・田中本家博物館・角屋もてなしの文化美術館・九州国立博物館などにおいて伝世品、大阪歴史博物館・京都市埋蔵文化財研究所・長崎市教育委員会・東洋大学井上円了記念博物館などにおいて出土品、泉屋博古館分館・眞葛ミュージアム・九州陶磁文化館・今右衛門古陶磁美術館・愛知県陶磁資料館などにおいて、清朝陶磁の影響下に製作された日本陶磁の調査を行った。 その結果、江戸遺跡で確認されていた18世紀末から19世紀にかけて輸入量が増大するという傾向が、大坂・京都・長崎といった他地域でも認められることが判明した一方で、遺跡の居住者や、所蔵者の性格が内容に大きく影響していることが判ってきた。 また、関連調査として行った日本陶磁の調査では、これまでやや等閑視されてきた感のある17世紀末から18世紀半ばにかけても、清朝陶磁の影響が少なからず認められることが明らかになってきた。これは、清朝陶磁の日本陶磁への影響力の強さが、輸入量の増大との単純な正比例での相関関係にはなく、むしろ異国趣味の流行や、交流が乏しいがゆえにかき立てられる異国への憧憬といった、文化的側面に大きく左右されていることを意味していると考えられる。 本研究では、調査成果の中間発表を兼ねて、平成25年度に京都国立博物館での特別展覧会の開催を予定しているが、以上の調査成果を踏まえて出陳作品リスト(案)を作成し、共催予定新聞社と開催に向けての協議を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果の中間発表として計画している特別展覧会の共催予定新聞社から、諸般の都合で展示予定作品リストの作成を急ぐよう要請があったため、展示候補作品の選定を進めるために国内調査に重点を置かざるをえず、当初計画していた海外調査や図録用写真の撮影が全く実施できなかった。その反面、国内調査では当初計画で平成24年度実施を目論んでいた遺跡出土品や田中本家博物館の本調査などをほぼ終えることができ、暫定版ではあるが展示予定作品リストの作成に漕ぎ着けた。 したがって、個々の作業の進捗状況にばらつきはあるものの、全体としては時間的に無理なく展覧会開催に向けての準備が整いつつあるので、おおむね順調と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
国内については、必ずしも充分とは言えないものの、最低限必要な調査は既に行えたので、今後は調査については補足的に行うこととし、平成24年度は、むしろ展覧会図録掲載用の写真撮影を重点的に進める予定である。ただし、当初計画の時点では考慮していなかった琉球地域を研究対象に加える必要があるとの認識をもつに至ったので、平成23年度交付金の残額を利用して、沖縄での調査は是非とも行うこととしたい。 また平成23年度には全く実施できなかった国外調査についても、平成24年度中の実現に向けて、最大限の努力をしたい。 平成25年度については、中間成果発表として特別展覧会を行う当初計画の予定に変りはなく、最終年度にである平成26年度には補足調査を行って、成果報告書を刊行する計画についても、現時点での変更はない。ただし、平成23年度の連携研究者であった佐藤隆氏(元大阪文化財研究所)については、転職に伴い研究者番号を喪失しているため、平成24年度以降は研究協力者として本研究へ参加の予定である。 なお、平成23年度は展覧会出品候補品の選定に向けて、情報収集としての調査に専念したため、研究成果の公表に全く力を割くことができなかったので、平成24年度には是非とも中間成果を何らかの形で公表することとしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度未執行分(繰越)を財源として、沖縄県埋蔵文化財センターでの調査を行う。平成24年度交付分については、英国および中国へ各1週間程度の調査に赴きたいと考えており、まずその旅費に充当することとし、残額については研究成果中間発表としての展覧会図録に掲載する写真撮影のための出張旅費としたい。その上で、なお残額が生じるようであるならば、佐賀・東京方面へ各1回程度の補足調査を実施することとしたい。
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