2012 Fiscal Year Research-status Report
「鎖国」下の日本における清朝陶磁の受容とその影響に関する調査研究
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23520141
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Research Institution | 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館 |
Principal Investigator |
尾野 善裕 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部, 工芸室長 (40280531)
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Keywords | 美術史 / 考古学 / 陶磁史 / 日中交流 |
Research Abstract |
のべ25日にわたって、徳川美術館・彦根城博物館・久保惣記念美術館・東京国立博物館などにおいて清朝陶磁の伝世品、長崎市教育委員会・沖縄県立埋蔵文化財センター・大阪市立美術館などにおいて清朝陶磁の出土品や沈没船引き揚げ品、長崎歴史文化博物館・京都府立総合資料館・泉屋博古館分館・広誠院・京都市美術館などにおいて清朝陶磁の影響下に製作された日本陶磁の調査を行った。 この調査を通して、沖縄に歴代皇帝の時期の清朝官窯製品がもたらされていることが確認できた。また、日本の遺跡からの出土品には煎茶碗などの数物が圧倒的に多いのに対して、伝世品には一品物の大型品が少なくないという顕著な違いが認められることも判明した。これは、江戸時代後期に日本へ輸入された清朝陶磁が、概して貴重品扱いされていたため、大型の一品物の場合には少々破損しても修復されて伝世している率が高いことを示しており、前近代の日本における清朝陶磁受容の研究を進める上で、本研究で行っているような伝世品の調査が極めて重要であることが一段と明らかになってきた。とりわけ、天保年間の箱書を有する清朝陶磁の一群を、国内旧家からまとまった料発見したことは、今後の研究の重要な基準資料となるものであり、特筆に価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日中関係の悪化に伴い、当初計画していた中国における調査を自粛したこともあって、生産地側の中国での調査を全く進めることができなかったが、その分のエネルギーを国内での伝世品調査に振り向けた結果、天保年間の箱書を有するまとまった資料群の発見など大きな成果をあげることができ、本研究の成果報告を兼ねて計画している特別展覧会「魅惑の清朝陶磁」(平成25年秋に京都国立博物館にて開催予定)の展示品内容の充実を図ると同時に、出品予定作品を9割以上確定させるところまでこぎつけることができた。また、昨年度からの懸案であった研究成果の逐次報告についても、僅かではあるが後掲のように実現できたため、おおむね順調と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
中国での窯跡出土品調査ができていないが、国内調査だけでも十分に成果が上がっているため、当面は本研究の成果公表の一環として位置づけている特別展覧会(平成25年秋に京都国立博物館にて開催予定)の開催を最大の目標として位置づけ、展覧会図録執筆のための調査や図録掲載用の資料写真の撮影に全力を傾ける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究成果の公表の一環として刊行を計画している図録の執筆に向けて、詳細調査を行うため旅費(国内)と、図録掲載用写真の撮影に重点的に経費を配分することとしたい。
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