2013 Fiscal Year Research-status Report
本阿弥光悦筆和歌巻の特徴解明と伝光悦筆和歌巻の真贋鑑定法の確立
Project/Area Number |
23520151
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
森岡 隆 筑波大学, 芸術系, 教授 (70239630)
|
Keywords | 本阿弥光悦 / 俵屋宗達 / 和歌巻 / 色紙 / 散らし書き / 三角法構成 / 古書論 / 二音節仮名 |
Research Abstract |
本研究は、俵屋宗達(生没年未詳)との合作を中心としつつ、本阿弥光悦(1558―1637)筆和歌巻を精査し、従来指摘されてこなかった書の特徴を帰納的に解明するとともに、光悦筆と伝称される一群の和歌巻やその断簡・色紙等について、真贋鑑定の有効な基準を確立することを課題とする。 平成25年度は出光美術館で光悦筆「蓮下絵百人一首和歌巻断簡」「花卉摺絵古今集和歌巻」「和歌色紙」と伝光悦筆「月に萩・蔦下絵古今集和歌巻」「花月帖」を調査。また東京国立博物館にて光悦の代表作「舟橋蒔絵硯箱」、漢字書跡の「赤壁賦」や、個人蔵ゆえ平生は実見が叶わない「四季草花下絵千載集和歌巻」を調査することができた。この和歌巻には光悦が元和元年(1615)に鷹峯に移住した後に用いた号「大虚庵」が用いられているものの、闊達自在の書風から慶長年間(1596~1615)後半の作と見て、当該落款を後入れとする説や、和歌巻そのものを光悦の弟子の書と見る説があり、下絵も宗達ではなく宗達派の絵師とする指摘があるなど、精査を要するものであり、ありがたい機会であった。五島美術館での特別展「光悦―桃山の古典」では系図など光悦に関する基本資料や書状、一群の「鹿下絵新古今集和歌巻断簡」「蓮下絵百人一首和歌巻断簡」とともに、美術館で初公開された「花卉下絵新古今集和歌巻」(個人蔵)などを実見調査することができた。 なお、これらの成果は後述の研究会において発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
主要3巻のほか「蓮下絵百人一首」の調査も進めているが、「四季草花下絵千載集和歌巻」(個人蔵)に関する精査は実見後に開始したところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
「四季草花下絵千載集和歌巻」の複製を入手することができたことから、「蓮下絵百人一首」の調査継続とともに、当該和歌巻の精査の進展も図り、その成果を発信するべく、論文投稿や研究会発表などに努める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本阿弥光悦筆和歌巻の調査は原寸の複製を用いる必要があり、それらの購入に充てる予定であったが、複製はいずれも限定部数であり、しかも刊行からの長年月でさらに部数が少なくなっており、購入困難による未執行額が生じた。 光悦書跡の実見調査はもちろんのこと、現在では稀有となってしまった研究資料の購入に充てる予定である。また発表成果の周知を図るべく、論文の抜き刷りなどの印刷費に充当する。
|