2014 Fiscal Year Research-status Report
本阿弥光悦筆和歌巻の特徴解明と伝光悦筆和歌巻の真贋鑑定法の確立
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23520151
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
森岡 隆 筑波大学, 芸術系, 教授 (70239630)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2017-03-31
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Keywords | 本阿弥光悦 / 寛永の三筆 / 短冊 / 三つ折り半字がかり / 和歌巻 / 俵屋宗達 / 三角法構成 / 書論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、俵屋宗達(生没年未詳)との合作を中心としつつ、本阿弥光悦(1558―1637)筆和歌巻を精査し、従来指摘されてこなかった書の特徴を帰納的に解明するとともに、光悦筆と伝称される一群の和歌巻やその断簡・色紙等について、真贋鑑定の有効な基準を確立することを課題とする。 平成26年度は、光悦を語るうえで避けて通ることのできない名数「寛永の三筆」の由来について検証し、明治29年(1896)11月刊『骨董雑誌』1号に「平安三筆」あるいは「寛永三筆」と記されたのが初見であることを確認した。また、寛永年間(1624~43)を迎えずして他界した近衛信尹(1565-1614)も含めての呼称が時期区分に適合しないとされてきたことについては、慶長期を前期として、元和・寛永・正保・慶安年間を中心とし、承応以降寛文期頃までを後期とする約70年間の江戸初期の文化を「寛永の文化」と称する昭和30年頃からの林屋辰三郎(1914―98)説で解釈すべきと説いた。従来の呼称の適合性を後発の文化史区分で認めることであり、事の順序が異なるものの、語呂よく普遍通行している「寛永の三筆」の追認になるとの新説を提示した。 一方、光悦の書跡とりわけ和歌短冊について考究を進めるべく、短冊における「三つ折り半字がかり」の書式の成立について調査した。その結果、書式そのものは今川了俊(1326頃―1420頃)の著で応永20年(1413)頃成立とされる歌学書『落書露顕』あたりまで遡ることができたが、「三つ折り半字がかり」という語そのものはおそく、大正後半から昭和初年にかけての造語であるとの見解を提示した。 なお、これらの成果は、後述の論文や講演等で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
個々の和歌巻の調査は順調と言えないものの進捗したが、それらを総合的に考究したうえで、光悦筆と伝称される書跡も含めた真贋鑑定法を提示するには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果をとりまとめる最終年度として、真贋鑑定法の有効性の基準を確立して提示する。学会誌への投稿や冊子を刊行するなどして、研究成果を広く発信する。
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Causes of Carryover |
書跡の調査には原寸の複製を用いる必要があるが、それらはいずれも希少であるため、最適資料を見出すことができず、未執行額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
光悦書跡の実見調査のために使用するとともに、研究成果として報告書の作成を予定しているため、その費用に充当する。
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