2012 Fiscal Year Research-status Report
大学教養教育におけるESDとしての地域活性化ワークショップの展開
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23520154
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
加藤 修 千葉大学, 教育学部, 教授 (20302515)
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Keywords | ESD / ワークショップ / 地域活性化 / アートプロジェクト / アート / 地域連携 |
Research Abstract |
昨年に続き、アートをコミュニケーションツールとしながら恊働活動をすることで、学生・市民が自己発見・他者理解をして、コミュニケーションベースを確立することをサポートした。一昨年は原発事故と大震災の影響で、本基金初年度は、事故早々の復興復旧で慌ただしい国内において、少しでも多くの市民が自己の責任や意志を持つことの重要性を再確認し、正常な価値観を回復する手だてを学生とともに努めたが、長期化が確定した24年度においては、意識を如何に風化させず、日常生活の中に継続可能なシステムとして組み込むかについて「現実」と向き合い、アートプロジェクトの核心を確かめながらそのあり方を大学生スタッフと模索した。 ①「旗をつくるー住みたい国を考える」:本ワークショップは参加対象を換えながら、2011年度より繰返し実践してきたが、今回は日本の今後を小学生に考えてもらう場として、「1/2成人式」を実践している小学校において実践した。4学年全児童が「大切なもの」を考え、100人を超す集団の中で児童が発表する場面も作った後、理想とする国を想定し色彩に願いを込めながら、一人ひとりが旗を制作した。さらに、その旗を各自自由に校庭にうちたて理想を述べた。(成田市公津の杜小学校) ②「地元商店街夜灯祭実行委員会との連携活動」:町おこし活動や福島県復興支援も行っている夜灯祭実行委員会との連携活動で、実践的なコミュニケーションシステムを体験した。福島復興オリジナルTシャツを制作販売し、売り上げの一部を実行委員会を通して現地に寄付した。また夜灯祭では、浅間神社裏公園にて超大型の光るオブジェの制作と地域住民を対象としたワークショップを実施。③「患者さんとつくる」:活動継続5年目。(千葉大学医学部附属病院)④「100人ワークショップ」:中学生を対象とする木組みによる大型オブジェ制作は3年目。今年度テーマは「舟」。(千葉県立美術館)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①学生のコミュニケーション能力の開発/本年度も前期は授業内で、アートの定義・地域連携の意義や目的・ファシリテーターなどについて学び、アートプロジェクトを企画した。後期はそのプロジェクトを、彼らが中心となり地域・現場において実践した。実践に向けての広報物の制作、広報活動、開催施設との調整、ワークショップで使用する材料・道具の作成、ワークショップ当日の連携などは、彼らのコミュニケーション力を向上させるとともに、大学内で学習する専門分野や各自の得意分野を十分に発揮させることで、役割分担を能動的に構築させた。②世代間連携を生み出し持続可能な社会への意識の萌芽を促す/大学生は、地域連携型の実践活動を通して異世代との交流が増した。企画運営にあたり彼らにとっては、地域スタッフは年上が多いが、ワークショップ参加者は小学生も多く、広範囲な年齢層とコミュニケーションをとることになる。その中で彼らは、過去の自分や未来の自分を垣間みながら、社会環境における自分の世代の意味と役割を体感した。③大学と地域の新しい連携のあり方を見いだす/大学生は、多様な人間と活動を繰り返し信頼を得ることで、「地域人」として認知された。地域における大学が、借り物ではなく、地域の財産として理解される契機に繋げた。 予定したすべてのプロジェクトを展開し、ワークショップ参加者を対象としたアンケートや大学生の振り返りの文章も多く得られた。また、本年度ティーチングアシスタントとしてプロジェクトの補佐をしてきた大学院生は、本人が修了研究としている「地域におけるアート普及」のテーマにも結びつけ、本年度から連携し始めた商店街との町おこし活動にも積極的な取り組みを見せている。学部学生も、各機関の代表者との企画会議において、対等に意見交換できほど意識が高まった。本研究の最終目標とする学生主体の地域連携活動が本年度も具体的な形で確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでも行ってきた病院・美術館等、昨年度より始めた学校関係や地域連携活動を実践する地元商店街振興組合との連携も含め、2013年度も地域・施設において、アートプロジェクトを継続する予定である。学校関係では昨年の小学校に加え、幼稚園でも実践する。商店街では、「アートフェスタ」という新たな内容も企画し運営する。また、それらすべての年間活動をドキュメント2013として制作する。 またそれとは別に、2013年度は本基金の最終年度でもあるので、ワークショップ参加者、大学生スタッフのアンケートをはじめとする、この3年間のデータを集計しまとめる。 2011年度は質量的に極めて充実した活動を行ったが、その実践成果をデータ化することの難しさを感じた。2012年度は、アートプロジェクトにおける「心の伝達作業」というデリケートな領域を損なわない範囲で(参加者に、調査実験のための活動とは伝わってほしくない)、アンケートなどの機会を増し、ワークショップ参加者や大学生スタッフのデータを収集した。大学生スタッフからは、フィードバックの文章も集めた。2013年度は収集する作業と、集計する作業を併行して進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費/本年度とほぼ等量のアートプロジェクト・ワークショップを開催することに伴う、材料等の購入。 旅費/ワークショップの実践・研究地域への移動 人件費/データの収集・集計、ドキュメントのページ作成費用、最終年なので多くなることが予想される。 その他/ドキュメント2013の印刷費、3年間の報告書の印刷費
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Research Products
(3 results)