2011 Fiscal Year Research-status Report
地歌と地歌以外の三味線音楽との楽曲交流に関する研究
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23520161
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
野川 美穂子 東京芸術大学, 音楽学部, 講師 (50218294)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 日本音楽 / 地歌 / 浄瑠璃 / 旋律型 / 歌舞伎 |
Research Abstract |
地歌と浄瑠璃の楽曲交流の過程と特徴を明らかにするために、平成23年度は以下の調査と研究を行った。(1)地歌の「浄瑠璃物」(半太夫物と繁太夫物)に関する文献資料の収集と調査、(2)地歌の「浄瑠璃物」の伝承者の芸談の整理、(3)地歌の「浄瑠璃物」の原曲に関する歌舞伎と人形浄瑠璃の上演情報の収集、(4)地歌の繁太夫物の音楽的特徴の分析。このうち(1)については、「浄瑠璃物」の分類が見られる歌本(『糸のしらべ』類、『糸のふし』類)の複写資料を入手し「浄瑠璃物」の分類状況と収録曲を調査した。とくに、「浄瑠璃物」の繁太夫物と半太夫物の両分類を明記した大坂系の歌本の最初である『糸のしらべ』(明和四年刊、國學院高校藤田・小林文庫所蔵)については、収録曲の現在の伝承状況(伝承の有無、記載される歌詞の異同)を精査した。(2)については、「浄瑠璃物」を多く伝承した初代富山清琴師(1969年、重要無形文化財保持者に認定)の芸談(『清琴、地うた修業』1966)を精読し、その成果を『地歌・箏曲の世界 いま甦る初代富山清琴の芸談』(2012年、勉誠出版、共著)にまとめた。(3)については、大阪府立中之島図書館所蔵の芝居番付から、繁太夫物の原曲につながる可能性をもつ、豊後系浄瑠璃を用いた歌舞伎の上演情報を抽出した。(4)については、繁太夫物の音楽に関する先行研究の特徴を整理し、繁太夫物に特徴的な旋律型を分析する方法を試案した。その成果は、2012年1月29日に開催された京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センターの研究会において、「地歌の繁太夫物の旋律型について」というタイトルで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画は、1.地歌の「浄瑠璃物」に関する地歌の文献資料(歌本・譜本類)の収集と調査分析、2.地歌の「浄瑠璃物」を伝承する専門家への聞き取り調査、3.地歌の「浄瑠璃物」の原曲に関する歌舞伎と浄瑠璃の文献資料の収集と調査、4.地歌側の資料と歌舞伎・浄瑠璃側の資料の照合、の4点であった。このうち1・3・4は、計画通り進めることができた。2については、聞き取り調査という形では行っていないが、「浄瑠璃物」の伝承者であった初代富山清琴師(1913~2008)の芸談を復刻・解説本にまとめる作業のなかで、本の共著者であり、「浄瑠璃物」の現在の伝承者である二代富山清琴師より、貴重な情報をいただいた。また、研究計画では平成24年度に行う予定であった地歌の「浄瑠璃物」の音楽様式の分析については、平成23年度にその試案を作成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、1.地歌の「浄瑠璃物」に関する地歌の文献資料(歌本・譜本類)の収集と調査、2.地歌の「浄瑠璃物」の原曲に関する歌舞伎と浄瑠璃の文献資料の収集と調査、3.地歌側の資料と歌舞伎・浄瑠璃側の資料の照合、4.地歌の「浄瑠璃物」を伝承する専門家への聞き取り調査、5.地歌の「浄瑠璃物」の音楽様式の分析、を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、(1)「浄瑠璃物」に関する文献資料の収集、(2)「浄瑠璃物」の音源資料の収集、に研究費を用いる。このうち(1)には、「浄瑠璃物」の分類を採用する地歌の江戸期の文献資料(歌本、譜本)、および、「浄瑠璃物」の原曲の解明につながる歌舞伎と浄瑠璃の文献資料(芝居番付)を、マイクロフィルムから複写する費用、地方の図書館に所蔵される文献資料を直接に実見するための旅費が含まれる。(2)には、SP/LPレコードの音源のCD化を業務委託する人権費が含まれる。
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