2011 Fiscal Year Research-status Report
『超マリオネット』論-再考 演劇改革、舞踊革命、人形劇ルネサンスの接点
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23520164
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山口 庸子 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 准教授 (00273201)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ゴードン・クレイグ / 演劇史 / 舞踊史 / 人形劇 / モダニズム / 身体文化 / 身体史 / 芸術史 |
Research Abstract |
The Acter and the Uebermarionetteを含むCraig, Edward Gordon: On the Art of the Theatre"(1905)を中心に「人間」「生命」「機械」「死」などをキーワードとして読解を行った。併せてGrund, Uta: Zwischen den Kuensten. Edward Godon Craig und das Bildertheater um 1900 (2004)等の文献を検討した。その過程で、自然主義的舞台に対する反モデルとしてのバロック演劇や象徴主義演劇の重要性、フックス、カンディンスキーなど同時代の演劇との共通点・相違点、クライストやシュレンマーとの接点が明らかになってきた。 人形劇に資料の収集に関しては、大阪大谷大学にある「ゴードン・クレイグ・コレクション」の資料調査を行い、貴重な文献を入手した。クレイグの人形劇への傾倒は一時的なものではなく、当初から演劇・人形劇・ダンスを一体のものとして考えていたこと、また模型舞台用のフィギュとの関連等もわかってきた。このコレクションについては、次年度も調査を続ける予定である。 さらに、予定外ではあるが、他の研究テーマ(「同時性」)と関連する形で、ヴァルター・ベンヤミンの人形的身体についての論考"Puppen, Wachsfiguren, Micky-Maus: Raeume der leblosen Leiber als Denkbilder der Simultaneitaet im Werk von Walter Benjamin"を執筆した。(現在印刷中)この論文を通して、バロック劇の影響、時間の空間化/空間の時間化、身体のオブジェクト化、など、ベンヤミンとクレイグに共通する幾つかの主題が明らかになり、今後の研究に生かす予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の成果発表はないが、当初より最初の二年間に集中して資料調査と文献の読解を行う予定にしている。23年度はThe Acter and the Uebermarionetteが収められたCraig, Edward Gordon: On the Art of the Theatre"(1905)を中心に読解を行い、Franko,Grund等の文献を検討した。その過程で、「超マリオネット」の理論における人間学的な演劇観への反発、舞台と俳優のテクノロジー化、視覚化などについての検討を行うことができた。また、大阪大谷大学にある「ゴードン・クレイグ・コレクション」の資料調査を行い、膨大な資料が所蔵されていることを確認した。また、ヴァルター・ベンヤミンの人形的身体についての上記の論考において、ベンヤミンの「同時性」の概念と人形的身体との関連を初めて明らかにするととともに、これまで論じられることのなかった、ベンヤミンとクレイグのに共通する幾つかの主題を浮き彫りにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度の予定は、Rood(ed.):Gordon Craig on Movement and Dance.の論考および関連する研究文献を検討し、「超マリオネット」の構想を共時的な身体文化との関連で考察することである。その際Cowan, Michael: Cult of the Will. Nervousness and German Modernity(2008)等を参考にして、機械的な運動を行う身体や操られる身体に注目したい。またこの関連で、クライストやシュレンマーに関する文献の読解も引き続き行うべく、資料の購入を進める。身体文化・舞踊関係の追加資料の購入を行うととともに、来年度の準備のため、モダニズムの人形関連の文献の収集を引き続き行う。また、大阪大谷大学の「ゴードン・クレイグ・コレクション」(富田林市)および日本近代文学館 (東京都目黒区)で、人形劇関係の資料調査を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
クライスト・シュレンマー関係の文献も含めた身体文化・舞踊関連の追加資料の購入に10万円、複写用のコピーカードの購入費用は3万円と計算される。人形劇資料の購入費用は10万円、複写用のコピーカードの購入費用は3万円と計算される。大阪大谷大学の「ゴードン・クレイグ・コレクション」(富田林市)および日本近代文学館 (東京都目黒区)で、人形劇関係の資料調査を行う予定である。旅費はそれぞれ2万円、および1万円、複写費は合計で1万円と計算される。
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