2011 Fiscal Year Research-status Report
桝源次郎の民族音楽研究活動の再評価:インド及び台湾民族音楽研究の視点を手掛かりに
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23520171
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
劉 麟玉 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (40299350)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 多佳子 京都教育大学, 教育学部, 教授 (70346112)
仲 万美子 同志社女子大学, 学芸学部, 教授 (50388063)
北田 信 大阪大学, 学内共同利用施設等, 講師 (60508513)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / 桝源次郎 / 民族音楽学 / 台湾民族音楽調査団 / インド研究 / 台湾先住民 / 黒澤隆朝 / ラビンドラナート・タゴール |
Research Abstract |
1)桝源次郎自身の論著:本研究対象の桝源次郎の学術背景や業績を知るために、桝の著作(エッセイ、論文等)を更に調べる必要がある。平成23年度『日印協会会報』や『台湾日日新報』を精査した結果、桝源次郎が執筆した文章を新たに発見した。また、桝が台湾民族音楽調査団の団長として台湾に渡った際の関連記事も発見した。しかし台湾総督府公文類纂を精査したが、これ以上新たな資料を見いだすことはできなかった。2)桝源次郎とタゴールの関係:タゴールは第二次世界大戦以前、日本の文人たちと親交があり、タゴールを訪ねるためにインドに渡った日本人は少なくなかった。桝源次郎もその中の一人であり、タゴールが創立した林間大学に留学した。同時代にインドに渡った日本人の日記や旅行記などが残っている。その中のひとりが野口米次郎である。それらの資料の内容を精査することによって、桝源次郎との関連性を見いだすことが可能である。3)早稲田大学に所蔵されている資料について:桝源次郎は早稲田大学坪内博士記念演劇博物館が主催した行事に参加し、講演を行ったという記事が残っている。そこで同博物館にて関係資料の予備調査を行った。4)桝源次郎の業績と年表の作成:新たに見出した資料を加え、業績と年表の新たなデータベース作成に着手した。5)インド音楽研究における桝源次郎の位置づけ:桝源次郎のインド音楽研究における業績を評価するために、1930年代以降の東洋音楽学界においてインド音楽研究はどれほど研究されたのかを調べる必要があると考えた。そこで、桝がインドから帰国した前後の時期にあたる1930年以降の日本の学会誌に掲載されたインド音楽関係の論文を集めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)研究目的の(2)「桝源次郎の研究業績」については以下の進展が見られる。(1)23年度に本研究対象の桝源次郎の論著と彼に直接関わっている記事資料調査を行った結果、一定の成果が見られる。新たに入手した資料の分析考察により、桝のインド音楽研究の業績や、第二次世界大戦中の活動がより明確になり、枡の研究の学術性を議論または評価することが可能である。(2)桝源次郎の研究・調査活動のデータベース化の作業に着手した。(3)桝の民族音楽学研究を評価する方法について検討した。具体的には東洋音楽学会(1936年創立、現社団法人東洋音楽学会)の機関誌『東洋音楽研究』から台湾・インド・インドネシアの音楽研究に関わる記述を抽出し、内容分析を行い、各々の地域研究における桝の研究を位置づけることとなった。2)研究目的の(3)「台湾民族音楽調査団が結成された経緯と桝源次郎の役割」について、桝の手元に所蔵された1次資料や新しい新聞記事を入手したため、それらの内容を分析することによって桝の役割を把握することが可能となった。3)桝源次郎の人物像を把握するために、タゴールと親交した、もしくは桝と同じ時期にインドに留学したほかの日本人が残した記録や著作を通して、桝のインドにおける足跡を確認していくこととなった。4)23年度の計画には下記の2点を達成できなかった。(1)桝源次郎の学術研究の原点である出身校の東京音楽学校で現在の東京音楽大学にて調査する予定であったが、今年度中実施できなかったこと(2)桝源次郎は1950年代からユネスコでの活動実態を知るために関係者へのインタビューを行う予定であったが、現時点では関係者へのコンタクトを取ることができなかった。従って、24年度中には上記の2点を達成するように努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
1)前年度に遂行できなかった二つの調査、すなわち東京音楽大学とユネスコに桝源次郎の記録が残されているかどうかについて行う。ユネスコの場合はこれまで関係者がいなかったため、聞き取り調査が実現できなかったが、次年度には可能な限り、積極的にユネスコにコンタクトし、桝を知っている人物へのインタビューを実現したい。2)桝源次郎が残した一次資料の内容を解読する。また、桝および台湾民族音楽調査団の撮影班と録音班に参加した団員が手書きした日記を翻刻し、内容分析を行う。上記の日記に見られる筆跡解読は難解なため、作業後、古文書の専門家の校閲が必要である。3)桝は台湾音楽、インド音楽だけでなく、日本音楽、インドネシア音楽についても研究業績を残したため、それらの関連論著と同年代、同研究分野の研究者が残した業績の内容と比較分析する。4)桝が留学したタゴールが創立した林間大学の資料を調査するため、インドの現地調査を行う。これは次年度にもっとも重点におき、現地協力者をと綿密な内合わせを行い、実施する予定である。5)桝の論著はまだ残っている可能性があるため、前年度に続いて資料調査を継続する。特に桝は民族音楽者田邉尚雄と田邉秀雄との関わりが深く、その周辺の資料を調べる必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)東京音楽大学とユネスコを訪ねるための国内旅費 2)インド現地調査の国外旅費及び現地で案内してくれる関係者への謝礼3)日記を解読するための謝礼と日記翻刻の作業費(謝礼)4)資料の複写費5)『東洋音楽研究』など研究機関誌収載の桝および関連領域の論文のデータベース化作業費(謝礼)
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