2012 Fiscal Year Research-status Report
桝源次郎の民族音楽研究活動の再評価:インド及び台湾民族音楽研究の視点を手掛かりに
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23520171
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
劉 麟玉 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (40299350)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 多佳子 京都教育大学, 教育学部, 教授 (70346112)
仲 万美子 同志社女子大学, 学芸学部, 教授 (50388063)
北田 信 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (60508513)
梅田 英春 静岡文化芸術大学, 人文・社会学部, 教授 (40316203)
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Keywords | 国際情報交換 / インド / 台湾 |
Research Abstract |
1)桝源次郎自身の論著:桝源次郎の研究および学術活動を理解するために,昨年度に引き続き,『日印協会会報』,『東洋音楽研究』,『音楽文化新聞』などを第二次世界大戦以前に刊行された雑誌を精査した。その結果,桝源次郎が執筆した文章と桝に関連する情報が多く見られた。特に『日印協会会報』には桝が執筆した記事が多く,インド音楽研究,タゴール大学での学びについて詳細に記述している。また,桝自身がタゴール大学でサンスクリット語を習得し,現地の音楽書を勉強したことが彼自身の記事から把握できる。従って,桝は堅実にインド音楽に取り組み,インドでの実地調査は確かなものであったと考えられる。 2)桝源次郎とインド詩人ラビドラナード・タゴールの関係:桝がインドに渡る以前,タゴールと面識があったかどうかは不明であるが,桝は記事の中でタゴールが作った学園の生活に触れながら,タゴールと直接会話を交わした様子を述べている。桝の足跡を辿るため,2012年8月下旬から一週間,研究分担者の田中多佳子と北田信と共にその大学,Visva-Bharatiを訪れた。その際,桝の情報が紹介されている一冊のベンガル語の本を入手した。それは桝がVisva-Bharatiに滞在したことを証明する貴重な書物であると考えられる。また,桝が『日印協会会報』の記事に使っていた写真はVisva-Bharatiの写真資料室所蔵のものであることが確認できた。 3)「桝資料」の閲覧と研究:これまでに転々といろいろな場所に保管されてきた,桝源次郎自身が大事に取り扱っていた一次資料や著作は,江東区議員徳永雅博氏の手元に保管されていることを知り,徳永氏を訪れた。今年度はそれらの資料の整理と活用に向かって取り組みたいと考えている。 4)昨年度の文献研究に基づいて一つの論文をまとめ,『奈良教育大学紀要』に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)研究目的の(2)「桝源次郎の研究業績」については以下の進展が見られる。①桝源次郎自身が持っていた貴重な資料(史料)の所在が分かり,それらの内容から現在まで公に刊行された雑誌記事や論文と違い,桝源次郎の学術研究の姿勢,発表されていない様々な情報が読み取れることを期待する。②桝源次郎の研究・調査活動のデータベース化の作業は昨年度に続き着手している。その一部は『奈良教育大学紀要』に投稿した原稿に記載した。③昨年度に引き続き桝の民族音楽学研究を評価する方法について検討した。Visva-Bharatiでの学習,中国,インド,インドネシアの音楽研究に関わる記述を抽出し、内容分析を行った。 2)研究目的の(3)「台湾民族音楽調査団が結成された経緯と桝源次郎の役割」について、桝の手元に所蔵された一次資料に基づき,桝の役割を把握することが可能であるため,今年度中にそれらの資料をベースに論文を書く予定である。 3)桝源次郎のインド留学の状況を把握するために、桝の足跡を追ってインドのVisva-Bharatiを訪れた。桝の情報が記録されている現地の書籍を入手することができ,大きな収穫となった。 4)下記の3点は昨年度達成できなかったため,今年度の課題にしたい。①桝源次郎の学術研究の原点である出身校の東洋音楽学校で現在の東京音楽大学における調査。②桝源次郎のユネスコにおける活動状況。③民族音楽学関係者へのインタビュー。
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Strategy for Future Research Activity |
1)桝源次郎が残した一次資料の内容を解明する。これまでは台湾関係の一次資料を持っていたが,台湾関係以外の資料も多数存在していることが分かった。それらの資料は年代的に古く,研究するためには保存方法を考えなければならない。特にインドの音楽・言語に関する資料など桝が勉学したと思われる書籍やノートが多く見られ、資料によって桝の自筆のメモが入っているものもある。これらの資料の内容を考察することによって、桝の研究姿勢を把握することができると考えられる。前年度,議論した結果,可能な限り,すべての資料をカメラに収め,デジタル化することが最も理想的であるという結論に達した。そのため,居住地から東京への往復出張が予想される。 2)東京音楽大学における卒業生情報やユネスコに残されている桝源次郎の記録についての調査を行い,また桝を知っている存命人物へのインタビュー調査も行う予定である。 3)前年度に引き続き,桝は台湾音楽、インド音楽だけでなく、日本音楽、インドネシア音楽についても研究業績を残したため、それらの関連論著と同年代、同研究分野の研究者が残した業績の内容とを比較分析する。 4)桝源次郎が自筆で書いたもの、とりわけ台湾音楽調査関係の一次資料を集め、資料集として刊行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の次年度方策に基づいて研究費の使用計画を以下のように考えている。 1) 桝資料を整理するための国内旅費(東京音楽大学を訪れるための国内旅費を含む)。 2) 桝源次郎を知る人物へのインタビューのための謝礼および旅費。 3)資料の複写費。 4)可能であれば桝源次郎資料集の印刷費。
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Research Products
(1 results)