2013 Fiscal Year Annual Research Report
中国北朝墓誌における特定刻法の伝播に関する基礎的研究
Project/Area Number |
23520184
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
澤田 雅弘 大東文化大学, 文学部, 教授 (20162547)
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Keywords | 石刻 / 墓誌 / 刻法 / 書道史 / 書法 |
Research Abstract |
特定刻法(原稿である筆跡の筆法のいかんに関わらず、自前の刻し方を貫いて特定の書風を刻出する自律的刻法)が時空を越えて伝播している実態を、[003]と仮称した特定の刻法について具体的に明らかにし、その成果の論文「北朝墓誌にみる刻法の伝播-特定刻法[003]について-」(大東書道研究第21号収録)を公刊した。 また、北京・中国社会科学院文学研究所におけるシンポジウムでの口頭報告、前橋市内での講演、大東文化大学における教員免許状更新講習での講義、大阪大学(非常勤講師)での集中講義において、過年度の研究成果である[001]及び[002]の各特定刻法の伝播の実態と併せて研究成果を公表し、次の(1)~(4)の意義を講じ、本研究の目的を達成した。 (1)従来まったく知られていなかった、筆跡に従属せず特定の書風を刻出する自律的刻法の存在を、[001][002][003]その他の事例により提示しえたこと。(2)従来の書法史観では、書丹(石面に直書きする)であれ摸勒上石(石面に筆跡を転写する)であれ、石刻は原稿である筆跡を忠実に反映しているとの認識を前提にしていたが、この認識は必ずしも鐫刻の実態を反映しておらず、刻法は常に書法に従属的であるとの従来の通念はむしろ否定されるべきであること。(3)これらの事実は、書法に特定の法を伝承する書派あるいは書統があるように、鐫刻にも特定の刻法を伝承する刻派あるいは刻統が存在したことを示唆すること。(4) 以上の内容は、石刻から筆法を読みとって書法史を構築してきた従来の石刻書法観に、抜本的な反省を迫るものであること。 なお中国社会科学院文学研究所におけるシンポジウムでの口頭報告を踏まえた原稿も本年度末に提出し、平成26年度に日中両国で刊行される予定であるほか、本研究を補足する、碑における刻法の混在に関する論文も本年度末に公刊した。
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