2011 Fiscal Year Research-status Report
イタリア声楽曲の歌詞の文芸技法と音楽との関係――ヴェルディのオペラを対象として
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23520187
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Research Institution | Tokyo College of Music |
Principal Investigator |
園田 みどり 東京音楽大学, 音楽学部, 講師 (60421111)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | イタリア・オペラ / ヴェルディ / オペラ台本 / リブレット |
Research Abstract |
本研究は、(1)ジュゼッペ・ヴェルディ(1813~1901)によるイタリア・オペラの台本にどのような文芸技法が認められ、それがどのように音楽化されているのかを、16~17世紀のイタリア声楽曲における歌詞の文芸技法と音楽との関係を参考にしながら検討し、その特質を明らかにすると同時に、(2)我が国におけるヴェルディのイタリア・オペラに関する学術研究の不足を段階的に解消することを目指すものである。 平成23年度は、ヴェルディの10作目のオペラであり、シェイクスピアに基づくヴェルディの3つのオペラの第1作にあたる《マクベス》(1847)を取り上げ、当時の彼がオペラ台本に対して何を求めていたのかを、関係者と交わした書簡、および彼が作曲に際して使用したと思われる自筆台本を参照しながら具体的に検討した。その成果の一部は勤務先である研究機関の紀要に論文として発表し(「ジュゼッペ・ヴェルディのオペラ《マクベス》――フィレンツェ初演版[1847]の台本成立経緯について」、『武蔵野音楽大学研究紀要』第43号[2011]、105-122頁)、音楽学や西洋史学の研究者からのみならず、声楽や声楽伴奏など、実技を専門とする芸術系大学所属の演奏家諸氏からも好意的な反応を得た。 また、平成23年12月~平成24年1月にはイタリアに赴き、ウディネ大学文学部でイタリア文学史の授業を担当する Matteo Venier 氏と、イタリア・オペラ台本の文献学的な諸問題について意見交換を行った。平成24年3月には再び渡伊し、ボローニャ大学文学部音楽・舞台芸術学科付属図書館において、19世紀のイタリア・オペラ台本に関連する最新の学術成果(当学科修了者による未刊の博士論文など)を調査・入手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はヴェルディのイタリア・オペラ全曲を対象とすることを目指しているが、台本について校訂版は存在せず、楽譜についても校訂版が未だ半分程度しか刊行されていない現状では、すでに先行研究の蓄積のある作品を対象に、ヴェルディが台本作家に対してどのような言語表現を要求したのかを具体的に明らかにすることが、まずは重要であろう。《マクベス》(1847)を取り上げたのは、通常は所在不明の、彼が作曲に際して使用したと思われる自筆台本が発見されており、しかもそれが Francesco Degrada によって十分に研究されているためであるが、今後シェイクスピアに基づく最晩年の2つのオペラ《オテッロ》(1887)と《ファルスタッフ》(1893)との比較が可能であるという点からも、適切な選択であったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的達成のためには、ヴェルディのイタリア・オペラを1作でも多く取り上げて、具体的な考察を行うことが必要である。《マクベス》(1847)のように自筆台本の所在が確認されている作品の場合は、そこからヴェルディの台本に対する意識をある程度は窺い知ることが出来るが、当該の言語表現をいかなる「音楽的」理由で彼が選択したのかをより厳密に考察するためには、《マクベス》については所在不明の、自筆による楽譜スケッチが現存・公開されており、作曲プロセスがより詳細に再構築できる作品を再検討することが必要不可欠であると思われる。よって平成24年度は、当初予定していた《リゴレット》(1851)ではなく、自筆の楽譜スケッチが現存・公開されており、しかもそれに関する先行研究が充実している《トラヴィアータ》(1852)を先に取り上げることとする。成果は勤務先である研究機関の紀要に発表する。 また、昨年度執筆した上記論文に対する編集委員会査読者の意見に従って、平成24年度は《マクベス》自筆台本そのものを論文の中心に据え、それが(1)ヴェルディによる台本作家フランチェスコ・マリア・ピアーヴェへの散文による指示、(2)ピアーヴェの用意した韻文テクスト、(3)協力者の文人アンドレア・マッフェイの校閲、(4)ヴェルディによるさらなる介入、(5)初演後の印刷台本への序文の追加、などの様々な段階といかなる関係にあるのかを、時系列に沿って改めて整理する論考も執筆する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年7月に、国際音楽学会 International Musicological Society 第19回大会に出席し、シカゴ大学名誉教授でヴェルディ全集総主幹でもある Philip Gossett ローマ大学教授と意見交換するため、ローマに赴く(旅費)。また、パルマのヴェルディ研究所から刊行されているヴェルディ書簡集など、19世紀イタリア・オペラ関係図書、楽譜の他、CD、DVD、楽譜浄書のためのコンピュータソフト等を購入する(物品費)。
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Research Products
(1 results)