2013 Fiscal Year Research-status Report
イタリア声楽曲の歌詞の文芸技法と音楽との関係――ヴェルディのオペラを対象として
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23520187
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Research Institution | Tokyo College of Music |
Principal Investigator |
園田 みどり 東京音楽大学, 音楽学部, 講師 (60421111)
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Keywords | イタリア・オペラ / ヴェルディ / オペラ台本 / リブレット |
Research Abstract |
昨年度同様、ヴェルディのオペラ《マクベス》(1847)を取り上げ、パリ初演(1865)のための台本と楽譜の改訂内容について考察し、論文「ジュゼッペ・ヴェルディのオペラ《マクベス》――パリ初演(1865)のための台本改訂について」(『東京音楽大学研究紀要』第37集[2013]、71-89)を発表した。 また自筆の楽譜スケッチが公開されているため、ヴェルディの作曲プロセスがより詳細に観察できる《ラ・トラヴィアータ》(1853)について研究を行った。この作品のみならずイタリア・オペラの多くは、台本と楽譜に記載された歌詞テクストの異同の問題を孕んでいる。だが国内ではそのことは紹介されていないので、論文「19世紀イタリア・オペラの台本と楽譜の言語テクストをめぐる文献学的な諸問題――ジュゼッペ・ヴェルディのオペラ《ラ・トラヴィアータ》を例として」(『武蔵野音楽大学研究紀要』第45号[2013]、71-88)を執筆し、発表した。 以上2つの論文抜刷は、ボローニャ大学芸術学科のL. Bianconi、G. La Face両教授の提案により、昨年度までの本研究の成果である他の2つの論文抜刷と共に、同学科図書館に収蔵・配架されることになった。 3月にはボローニャ大学A. Pompilio教授と会談し、同教授が目下構築中のイタリア・オペラ台本のデータベース<http://corago.unibo.it/>について、その目的と進捗状況等について詳細な説明を受けた。またヴェネツィアのチーニ財団図書館も訪問し、オペラ台本について調査を行った。 同月下旬にはカルロ・ジェズアルド(1561-1613)の作曲した多声世俗声楽曲に認められる歌詞と音楽の特徴について講演を行った(日本イタリア古楽協会)。ジェズアルドの歌詞に対する態度は、本研究でこれまでに判明したヴェルディのそれと共通する点があることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は以下の2点である。①ヴェルディのイタリア・オペラの台本に認められる文芸技法がどのように音楽化されているのかを、16~17世紀のイタリア声楽曲における歌詞の文芸技法と音楽との関係も視野に入れながら検討し、その特質を明らかにする。②我が国におけるヴェルディのイタリア・オペラに関する学術研究の不足を段階的に解消する。 ①これまでの3年間の研究により、ヴェルディのイタリア・オペラの台本に認められる文芸技法については、台本の元となった文学作品の表現から影響を受ける一方で、ヴェルディの好む、あるいは好まない言い回しがあることが、書簡等の証言によって明らかになってきた。台本の音楽化については、Pagannone(1996)およびDella Seta(2008)を手掛かりに、具体的にどのオペラのどの番号曲を考察対象とするのか、また考察方法について、目下検討中である。 ②については、本研究によって研究代表者がこれまでの3年間に発表してきた4つの論文を読めば、ヴェルディのオペラを研究する際の基礎資料が現在はどのような状態にあるか、また国際的な研究の状況も概観できるように、テーマの選択と論述の上で工夫を重ねてきたつもりである。加えて、これらの論考を通して、ヴェルディのオペラ台本および音楽テクストを確定することの難しさも、明らかにすることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度に引き続き《マクベス》パリ初演(1865)のための台本と楽譜の改訂内容について調査・整理し、その成果を所属研究機関の紀要に発表する。 《仮面舞踏会》、《運命の力》、《ドン・カルロス》、《アイーダ》、《シモン・ボッカネグラ》、《オテッロ》とは異なり、ヴェルディは《マクベス》についてはいわゆる「演出指示書」を残さなかったが、彼が関係者と交わした書簡から、どのような舞台を望んでいたのかを推測することはできる。Conati(1981)とChegai(1996)を参考に、《マクベス》の上演を通して見る「演出家としてのヴェルディ」ついても、併せて調査する。 歌詞の文芸技法とその音楽化については、昨年度に引き続き、Pagannone(1996)とDella Seta(2008)を出発点として、さらにHuebner(1992)も参考にしながら考察を進める。その成果は平成27年1月に東京二期会のイタリア歌曲研究会において発表し、声楽実技を専門とする諸氏、および音楽学研究者の批判を仰ぐ。 年度末には、これまで4年間の研究成果をまとめた研究成果報告書を作成する。
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Research Products
(3 results)