2011 Fiscal Year Research-status Report
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23520194
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
加藤 寛 鶴見大学, 文学部, 教授 (70161114)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 考古学 / 近代史 / 図案 / 漆芸技法 / 中国古代史 / 朝鮮人民共和国 |
Research Abstract |
平成23年度は、東京大学文学部考古学研究室所蔵の中国漢代の漆器調査を行った。7月に行った調査では、化粧箱・鏡箱・盤・耳杯など合計10件の漆器を対象に、計測・製作技法の調書の作成・写真撮影など通常の漆芸品調査を行い、耳杯の復元のためのデータ作成を行った。写真撮影では高感度デジタルカメラを用い、撮影後に3次元画像システムに組み込んで、画像の保管を行った。耳杯の復元では、調査記録及び撮影後の情報をもとに粘土型を作成し、シリコン樹脂での外型作成を行い、4枚重ねの麻布を麦漆で内貼りした。漆の乾燥後離形し、粗い下地および錆下地を全面に付け、水研ぎを行って漆を塗った。 楽浪漆器は本研究のはじめとなる大きな要素を含んでいる。1910年代に朝鮮人民共和国のピョンヤン北方にある古墳群を日本人による漢代の漆器や陶磁器などの発掘から、日本文化の原点として評価されている。発掘した漆器のほとんどが亀裂や剥落などの損傷があったために、日本で修復して返還したものである。今回、北朝鮮に戻すことができなかった東京大学及び東京国立博物館に保管されていた複数の漆器や剥落片について朝鮮人民共和国から返還要求が出たため、急遽再調査を行い、東京芸術大学を会場としてシンポジュームを開催し、朝鮮・中国考古学、近代史学、図案、漆芸技法など各方面からの発表を行った。その結果、美学出版社から「楽浪漆器の技法について」(『楽浪漆器―東アジアの漢の漆工品』平成24年3月p264-274)として刊行し、本研究の報告書とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では3年間の研究期間中に年次ごとのテーマを追って、興福寺阿修羅像の復元に至る計画である。今年度は、朝鮮人民共和国で発掘された漢代の漆器の復元と技法の再現をテーマに『楽浪漆器―東アジアをつなぐ漢の漆工品―』を刊行した。研究は順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、奈良県東大寺の正倉院で修復している伎楽面を対象に、中国漢代の即の技法がどのようにして日本の乾漆技法へ変遷してゆくのかを調査する。また、平成25年度は奈良県の興福寺国宝館の保管する阿修羅像の復元を試みる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度使用予定であった復元材料の予算が当初見込み額より少額で成果が得られたので、平成24年度の物品費での漆の購入、復元のための工具の購入にあてる予定である。旅費は奈良県での打ち合わせ、当麻寺四天王の調査、京都国立博物館の調査。謝金は写真の整理、3次元画像システムの維持費。平成25年度 物品費は漆の購入、復元のための工具の購入。旅費は奈良国立博物館への出張。興福寺の調査。謝金は写真の整理。3次元画像システムの維持費。その他は報告書の印刷費。
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Research Products
(1 results)