2012 Fiscal Year Research-status Report
テクノロジーアートにおける言説とメディア -死生観を反映した芸術表現-
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23520195
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Research Institution | Shizuoka Sangyo University |
Principal Investigator |
北市 記子 静岡産業大学, 情報学部, 准教授 (90412296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八尾 里絵子 甲南女子大学, 文学部, 准教授 (10285413)
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Keywords | メディアアート / 映像メディア / 芸術表現 / 山口勝弘 |
Research Abstract |
ひき続きメディアアーティスト・山口勝弘と密に連絡を取りながら、新しい作品構想の聞き取り調査を行い、彼の飽くなき探究心を具現化するための様々な方策を練り上げていった。現在構想中の作品の一つは、マルチイメージによるメディア・インスタレーションとなる見込みであるが、そのシステム設計やビジュアルコンテンツ制作など技術・表現の両面から、他の研究者とも協力しながら継続的にサポートを行い、完成に向けて様々な具体的な作業を行っている。 昨今国内外では、山口がかつて在籍した芸術家集団「実験工房」が再び大きな注目を集めている。2013年1月から神奈川県立近代美術館で開催された「実験工房展」は、わが国の戦後芸術における彼らの偉大な功績を改めて振り返るもので、たいへん大きな話題となった。すでに故人となったメンバーが多い中、今なお貪欲に制作への意欲を持ち続けアーティストとしての活動を続ける山口の動向は、常に多くの関係者の注目を集めており、本研究はそうした活動を下支えするものとして位置づけられている。 11月には上記の研究成果をまとめ、「環境芸術学会第13回大会」において口頭発表を行った。(北市・八尾)またこれらの研究と併せて、ここ数年継続して行っている国内外でのメディアアート作品の先端作品事例調査も実施し、3月にその成果を研究論文として発表した。(北市) その後、新作発表の場として「山口勝弘展(仮称)」を企画し、アーティスト自身の了承を得ることができた。現在は2013年10月の開催に向けて、様々な具体的な準備を行っている段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記載した5つのアプローチの内、特に③(新作構想の具現化:表現手法の探求と作品展示)については、新たに他の研究者の協力も得て技術的な問題点を少しずつ克服し、完成に向けて具体的な道筋が見えてきた。 また本研究の集大成として2013年10月に作品展の開催が決まり、新作の作品展示・作品発表についても順調に準備が進んでいる。併せて学会での口頭発表や研究論文の発表も行い、研究成果の社会への還元も行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の年度毎のテーマは、23年度「基礎研究」、24年度「作品制作を通じて」25年度「作品制作と分析、次への展望」と設定し、現在まで順調に進行している。24年度においては、山口の新作構想の試作を具現化し、その過程において、山口の作品作りには非常に崇高な想いと明快な意図が同居していることが判明した。しかしこの試作は後に不採用(あるいは保留)となり、作家が作品に対してもつ旬の考えとその期間に翻弄される結果となった。この過程は我々にとって非常に重要な事であり、これらのやり取りを経て最終年度は、山口勝弘展(仮称)の開催を実施する方向にまとまった。この研究の集大成として、展覧会実現までの全行程を「いまの山口」の世界観及び集大成ととらえ、後世(特に、メディアとアートに関わる我々以降の世代)に向けて、美学的価値を提示したいと考えている。それにより本研究の目的である「芸術とテクノロジー」或いは「言説とメディア」の関係性について結論を導きだし、日本のテクノロジアートの貴重な資料と位置づけたいと強く考えている。 以下に、本年10月神戸芸術工科大学で実施予定の、山口勝弘展の企画案概要を記す。「神戸芸術工科大学名誉教授であり、日本のメディアアートの偉大な先駆者として知られる山口勝弘の作品展を、神戸で開催する。山口は、1992年から2001年に病で倒れるまで神戸芸術工科大学視覚情報デザイン学科および大学院芸術工学研究科で教鞭をとり、本大学の発展に多大なる貢献をした。病気の後遺症により不自由な身体となり、芸術家・研究者としては第一線から退くこととなったが、その後も旺盛な制作意欲を持ち続け、表現スタイルを柔軟に変化させながら、現在も新たな作品をつくり続けている。本展では、そうした山口の近年の作品群にスポットをあて、メディアアートのパイオニアの最晩年における現在進行形の活動を紹介するものである。」
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度は成果発表の年と位置づけ、継続的に行っている海外メディアアートの現地調査と、山口勝弘展の開催を目標とする。山口の新作制作補助を行い、今の山口を存分に認知するべく、山口が最後に教育活動に勤しんだ地である神戸で作品展を開催する。 研究費の内訳は、旅費80万、物品費(映像機器等)37万、その他20万と想定する。本年度は展覧会の開催が主たる研究となるので、それに関する作品制作費、額装、運送費、会場レンタル費、交通費、人件費等に費用が発生すると考えている。経費総額は約137万円とする。
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Research Products
(2 results)