2011 Fiscal Year Research-status Report
演劇的知見を活かした実践型生涯活動のモデルプログラム策定に関する基礎研究
Project/Area Number |
23520196
|
Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
椋平 淳 大阪工業大学, 知的財産学部, 教授 (00319576)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 生涯活動 / 演劇 / アウトリーチ / 住民参加 |
Research Abstract |
平成23年度は、全国各地で開催されている各種の演劇的アウトリーチ活動の中から、一般市民の生涯活動と深く関わる市民参加型演劇公演の運営についての実態調査を主な活動とした。 まず、10~11月に京都府で開催された文化庁主催の国内最大の文化祭典である「第26回国民文化祭・京都2011」のプログラムの中から、「現代劇の祭典」構成朗読劇を取り上げた。この舞台作品創造事業は、京都府立文化芸術会館で過去4年間にわたって企画・運営されてきた府民参加型の朗読劇創作を土台としており、蓄積されてきたノウハウを最大限に活かした取り組みとなっている。今回の作品である「京都で見つける物語」の出演者・スタッフ・劇場担当者など総勢50名を超える関係者に対してアンケートやインタビューによる資料収集を行うことで、きわめて有効な調査結果が得られた。 第2の調査対象として、札幌・コンカリーニョで毎年開催されている「温故知新音楽劇」を実地調査した。例年2~3月に本番を迎えるこの事業は今年度で7回目であり、運営主体となるNPO法人コンカリーニョには、地域の歴史・生活に根ざした住民参加劇を創造するユニークな手法が蓄えられてきた。今回の作品である「シャッポおじさんの写真館」の主催者や出演者へのインタビューなどにより、貴重な資料が収集できた。 第3の対象として、近年、国内外からの注目を浴びている岐阜県・可児市文化創造センター主催の「市民ミュージカル」を実地調査した。「君といた夏」と名づけられた今回の作品の100名近い出演者やその関係者を中心として、当該事業が市民全体の祝祭事業的位置づけに昇華されている顕著な事例について、センター長などへのインタビューによって資料収集を行った。 その他、他の種類の演劇的アウトリーチについても、いくつかの劇場(滋賀県立びわ湖ホールなど)へ出向き、いくつかの小規模な調査を実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度の実績として、全国各地の公共文化施設で行われている演劇的アウトリーチから、代表的な3つの住民参加型演劇事業を抽出し、アンケートや現場視察によって多角的な資料(映像を含む)が収集できている。また、その理念や運営方法を比較考察するため、活動に携わる演劇関係者や施設の担当者、さらには一般参加者にアンケート・インタビューを実施することで、成果や課題について生の声を収集している。 こうした実地調査にもとづく資料収集によって、今後さらに他の事業の調査や初年度対象事業の追加調査を推進する際に土台となる調査フォーマットの抽出や、収集資料に基づく分析・考察を進める基盤が予想通り出来上がっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究2年目は、事前の予定をほぼ踏襲し、初年度で整理された調査フォーマットを利用しつつ、顕著な演劇的アウトリーチを実施している実績を持つ全国からピックアップした公立文化施設・文化財団への調査を行う。アンケートや現場視察によって資料を収集したうえで、同時に、活動に携わる演劇関係者や施設の担当者、さらには可能な範囲で一般参加者にインタビューを実施する。 調査対象候補となる全国の劇場・事業は、新規・継続を含めると、北海道上川郡朝日町による住民参加劇、札幌・コンカリーニヨ、仙台市市民文化事業団(せんだい演劇工房10-BOX)、東京・世田谷パブリックシアター、新潟・新潟市民文化芸術会館、静岡・静岡県舞台芸術センター、富山:富山市民芸術創造センター、岐阜・可児市文化創造センター、愛知・愛知芸術文化センター、山口・山口情報芸術センター、北九州・北九州芸術劇場、福岡・福岡市文化芸術振興財団、などである。実際の調査は、調査に相応しい事業実施の有無、先方の調査受け入れ態勢、事業の実施時期などを総合的に勘案し、適宜決定する。 また、現時点での研究進捗・分析考察の結果を、6月開催の日本演劇学会にて発表する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に、調査対象となる事業実施会場への出張費として支出する。また、専門的知識を有する調査対象者へのインタビュー謝礼や、収集資料の整理・編集を委託する作業担当者への謝礼、資料収集に必要な記録媒体の購入に当てる。
|