2012 Fiscal Year Research-status Report
近代における琵琶と諸芸能―新ジャンルの形成と現代への継承―
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23520202
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Research Institution | Okinawa National College of Technology |
Principal Investigator |
澤井 万七美 沖縄工業高等専門学校, 総合科学科, 准教授 (60330726)
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Keywords | 近代 |
Research Abstract |
平成24年度における研究実績については、以下の通りである。 (1)戦前の基礎資料の収集について:前年度に引き続き、国立国会図書館を中心に調査活動を行った。琵琶愛好家のための雑誌『琵琶新聞』に加え、琵琶教本、各種新聞掲載の評論にも手を広げた。西洋音楽との関わりについては、東洋音楽学会でのパネルディスカッションをともに行った研究者仲間から、当時の関連雑誌や主要研究者の情報を頂くことができた。 (2)実演家団体への聞き取り調査について:薩摩琵琶の弾奏家で、現在も東京都江戸川区を拠点に活動を展開している「田中錦煌(きんこう)師」に知遇を得、東京での演奏会の後に聞き取り調査を行うことができた。今回は「お伽琵琶」を中心に、演奏時の心得やレパートリー、活動の場、レパートリーを保持している弾奏家などの情報を得ることができた。また、その聞き取りを通じて、現代社会における琵琶を初めとする邦楽の位置付けについて、切実な状況をも窺い知ることができたのも、貴重な成果である。 (3)研究成果の公開(論文・口頭発表)について:論文としては、「水也田呑洲の琵琶講談」(京都市立芸術大学日本伝統音楽センター研究報告(8) 近代における音楽・芸能の再検討II P37-46 2012年3月)を公にした。また、口頭発表としては、「近代日本における琵琶と諸芸能 ―普及活動の様相― 」(東洋音楽学会:ラウンドテーブル「庶民が親しんだ芸能の諸相 ― 明治から大正へ」横田洋・土田牧子・寺田真由美・澤井万七美 2012年7月)に参加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最大の懸案でもあった、実演家とのコンタクトを取ることができ、聞き取り調査を実施できたことが今年度の成果であると考えている。実演家との継続的な交友関係を結ぶことは、本研究のサブタイトルにある「現代への継承」という面において非常に大きな意味を持つからである。今後も聞き取り調査をつづけ、琵琶の現状についてもより知見を広げていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、以下の通り研究を進めていく予定である。 (1)戦前の基礎資料の収集について:引き続き、文献調査を行う。特に、西洋音楽系統の雑誌や資料の調査を進め、近代の「琵琶」がどのような位置付けにあったのかを探る。また、子供向けの「お伽琵琶」については、教育史の文献にも視野を広げる必要がある。 (2)実演家からの聞き取り調査について:継続的な聞き取り、また場合によっては音源資料の御提示も依頼したい。 (3)研究成果の公開(論文・口頭発表について):「お伽琵琶」に関する論考を年度内に発表したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費は、以下の通り使用する予定である。 (1)旅費:文献調査・実演家への聞き取りのための東京出張に主に使用予定。190,000円の見込み。 (2)その他:主に資料複写に使用予定。10,000円の見込み。
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Research Products
(2 results)