2011 Fiscal Year Research-status Report
アジア、ヨーロッパ、アフリカに関わるテキスタイル・グローバリゼーションの研究
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23520203
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
吉本 忍 国立民族学博物館, 民族文化研究部, 教授 (10124231)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金谷 美和 国立民族学博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 外来研究員 (90423037)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 オランダ、インドネシア、スイス / 染織 / 更紗 / インド / インドネシア / 東アフリカ / グローバル化 |
Research Abstract |
8月に、吉本、金谷はオランダ、ベルギーにおいて19世紀後半から20世紀初頭にかけてプリント会社が作成したプリント更紗のサンプル帳の調査を行った。フリスコ社の所蔵する108点のサンプル帳と、ロッテルダム世界博物館の所蔵するサンプル帳7点の合計115点のサンプル帳について重点的に調査を行い、画像の電子データの撮影、文字資料の一部読解を行った。また、アントワープ服飾博物館、ロッテルダム世界博物館、ライデン大学においては専門家と意見交換を行った。調査の結果、サンプル帳のなかに(1)東アフリカ向けのプリント更紗製品のサンプル、(2)英領インドで収集された染織品、(3)東アフリカで収集された初期カンガのサンプル、(4)インドネシア向けイミテーション・バティックのサンプルを発見することができた。 この研究の成果については、金谷が2月に国立民族学博物館で開催された国際シンポジウム「Consuming Textiles through Their Uses and Reuses」にて「Imprinting Indian design on African Kanga Cloth」という題目で発表した。また、『現代インド研究』誌に研究論文を執筆、投稿した。 国立民族学博物館所蔵の、旧大阪府産業デザインセンターの輸出繊維商品関係資料については、整理と閲覧を行い、一部画像の電子データを撮影した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)今年度の目的は、プリント更紗のサンプル帳の全体像をつかみ、次年度以降の調査のためにサンプル帳を選択するためのサーベイを行うことであったが、その目的はおおむね達することができた。予定していた調査地は、ロッテルダム世界博物館(オランダ)、フリスコ資料室(オランダ)、ABCワックス資料室(イギリス)、グラールス博物館(スイス)、アントワープ服飾博物館(ベルギー)である。このうち、今年度調査することができたのは、ロッテルダム世界博物館とフリスコ資料室であったが、グラールス博物館とアントワープ服飾博物館については、研究者と連絡をとって情報収集を行い、来年度の調査の準備を行うことができた。また、ABCワックスについては、生産拠点のガーナへの移転のため、一時的に資料室の所在が不明であり、確認中である。場合によっては現地調査を行わず、文献調査で補うことも考慮する。2)今年度の研究目的であった、国立民族学博物館所蔵の旧大阪府産業デザインセンター所蔵の輸出繊維商品関係資料の整理・閲覧は、おおむね達することができた。東アフリカ向けのプリント更紗の意匠登録関係の資料をもとに、記載された繊維会社名のリストアップを行い、会社の概要について資料を収集するとともに、一部画像データの撮影を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度の研究の推進は、今年度の研究成果をうけて行う。2月に吉本、金谷がプリント更紗のサンプル帳の調査のため、オランダ、ベルギー、スイス、イギリスに行く予定である。そのうち、ロッテルダム世界博物館(オランダ)、フリスコ資料室(オランダ)のサンプル帳については、今年度のサーベイによって選択されたサンプル帳の調査を重点的に行う。グラールス博物館(スイス)、アントワープ服飾博物館(ベルギー)のサンプル帳については、今年度先方の研究者と連絡をとり選定した資料について重点的に調査を行う。ABCワックス資料室(イギリス)については、資料の所在を確認し、確認できない場合には文献資料の収集につとめる。 国立民族学博物館に所蔵された旧大阪府産業デザインセンターの資料についての調査を継続する。 各自データ整理と分析を行い、国立民族学博物館において研究会をもうけて互いの調査報告と検討を行う。さらに、金谷は10月に開催される日本南アジア学会において、研究発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する予定の研究費が生じたのは、8月の海外調査までに交付金の支給額が決まらなかったためである。支給額が未定であったため、海外調査の日程を削減し、予定していた調査先を変更せざるを得なかった。したがって今年度使用できなかった研究費については、来年度に請求する研究費と合算して使用する予定である。来年度に調査日程を当初予定よりも増やし、今年度訪問することができなかった調査先での調査を行ってくる予定である。 研究計画の変更や、研究を遂行する上での課題は特にない。
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