2011 Fiscal Year Research-status Report
1968年以降の現代文学とサブカルチャーの相互交渉と再編に関する総合的研究
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23520205
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
押野 武志 北海道大学, 文学研究科, 教授 (70270030)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千田 洋幸 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (40251566)
西田谷 洋 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (70378230)
横濱 雄二 北海道大学, 文学研究科, 助教 (40582705)
竹本 寛秋 北海道大学, 高等教育推進機構, 助教 (20552144)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 日本近代文学 / メディア研究 / サブカルチャー |
Research Abstract |
今日の文学研究・文化研究の問題点を近代批判の文脈から68年の思想まで遡り整理した上で、68年代以降今日に至る現代日本文学とサブカルチャー、あるいは活字メディアと視覚メディアの錯綜した交渉関係を、村上春樹の登場とその受容史という縦軸を中心に同時代の文化・メディア環境も視野に納めながら具体的な相において通史的に明らかにした。このようなジャンル横断的な新たな現代日本文学史を構築するためには、これまでの方法論や文学理論では捉えきれないという反省のもとに、デジタル化社会に応じた、新たな分析概念及び文学理論の再構築も同時に目指した。 以上のような、本共同研究の目的及び今年度の研究計画に従い、2011年10月14日、北海道大学において、第1回の研究報告会を開催した。各自の研究経過を報告し合いつつ、研究計画全体の方向性について認識を共有した上で、今後の研究企画について討論した。特に、竹本寛秋の実績「文学史を形成する力学/文学史が形成する概念-「詩」における相互交渉の様態の検討」がすぐれた成果として報告された。 そのような成果を踏まえ、2012年3月16日、富山大学において、第2回の研究報告会を開催した。千田洋幸の「初音ミク」に関する研究成果が注目された。また、西田谷洋と押野武志による村上春樹研究の進捗状況が報告された。さらに、同日行われた、北日本サブカルチャー研究会・第2回例会に出席し、発表研究成果の一部を公開した。アニメに見る地域表象をテーマに、西田谷洋は、地元アニメ制作の「花さくいろは」について発表し、押野武志と横濱雄二は、ディスカッサントとして参加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2回にわたる研究経過報告会において、共同研究の方向性と進捗状況を確認し、本共同研究の各自の研究課題を深化・発展することができた。その結果、各メンバーは、研究の目的に従った研究業績を当該年度に多く発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
押野武志は、メディアを横断して採用される「セカイ系」や「ループもの」の具体的な分析を通して、「物語」「フラット」といった分析概念を、活字メディアと視覚メディアを横断的に分析できる概念として再定義する作業に入る。千田洋幸は、1990年代以降の文学/文学理論の衰退という状況、さらに1995年における社会的・文化論的転回を踏まえながら、多様な文化ジャンル相互の葛藤と溶解について、村上春樹、村上龍、庵野秀明、下田正美、新海誠等の表現者を中心に考察していく。西田谷洋は、アニメのみならず、マンガ・TVドラマ・ライトノベル・ゲームなども素材に多様に現れる他者との接続方法の今日的なありようを検討し、さらに定義上内的構造と同時に神話への言及性を持つメタフィクションの理論的検討と「新世紀エヴァンゲリオン」以降のテクスト分析を積み重ねる。横濱雄二は、1990年代から2000年代にかけての複数のメディアミックス作品におけるジャンルの役割を比較検討し、その分析を重ねることで、当該年代の日本のサブカルチャーにおけるジャンル形成と展開の文脈を明らかにする。これによって前年度に探求したジャンルを通底する視座について、歴史的観点を加味することでさらなる拡充を図る。竹本寛秋は、テクノロジーと文学・サブカルチャーが取り交わす相互交渉を明らかにするため、「テキスポ」や「文学極道」「現代詩フォーラム」「うたのわ」などの、文芸相互批評サイトの様態や、ニコニコ動画などにおける職人文化の形成、及び「初音ミク」をめぐる状況が示すような、ネットワーク上の創作活動が商業資本と関係を取り結ぶありようを分析し、2000年代以降の文学・サブカルチャーを、今日の情報環境の中において分析する方法論を構築する作業を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基本的な文献や資料は前年度で概ね準備できた。次年度は、研究成果の段階的な公開と他の海外を含めた研究者との意見交換、情報収集を兼ねて、国際シンポジウムを開催する予定である。日本のサブカルチャー研究で優れた研究業績のある研究者を国内外から招聘するため、物品費以外のシンポジウム開催に関わる諸経費・謝金・旅費等が占める割合が大きくなる。 尚、平成23年度未使用額が発生しているが、年度内に完了した出張費や年度末に発注・納品した物品費であるにもかかわらず、年度内の会計処理が間に合わなかったことに因るものであり、実質的には未使用額は発生していない。
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Research Products
(30 results)