2011 Fiscal Year Research-status Report
植民地統治下における昔話の採集と資料に関する基礎的研究
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23520211
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
石井 正己 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (30251565)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 国際研究者交流(韓国) / 昔話 / 植民地 / 教科書 / 民俗学 / 人類学 / 満州 / 教育 |
Research Abstract |
(1)鳥取・島根両県は日本海を隔てて朝鮮半島と向き合う位置にあるので、植民地の統治下において朝鮮に渡った人も多い。高木敏雄や柳田国男に資料を提供した松江出身の清水兵三は、朝鮮半島で昔話や歌謡の採集を行った。そこで、2011年10月、東京学芸大学において、「山陰の民話~日本とアジアを結ぶ~ 出雲かんべの里館長・山陰民俗学会会長 酒井董美」の講演を軸にフォーラムを開催した。この記録集は、2012年2月、『山陰の民話に学ぶ』として研究報告書を発刊した。 (2)帝国日本が行った移民政策は植民地統治と深く関わる場合があった。山口県周防大島はハワイに官約移民を送り出した地域だった。ハワイ移民資料館には大正期の日本語教科書が所蔵されている。移民に伴う教科書の研究はこれまでなく、調査・分析を進めてこの研究の充実・拡大を図ることが可能になった。一方、山形県は満州国の建国に伴って開拓移民を送り出した地域であった。今も生存者があり、没後でも遺品があるので、聞き書き調査が可能である。また、山形県出身の佐藤陸三の資料には、南洋群島における口承文芸の採集手帳がある。こうした山形県の調査は野村敬子氏が行った。 (3)2012年3月、東京学芸大学において、「中国・満州の昔話と教育」のフォーラムを開催し、「講演 中国「東北」をめぐる民間伝承 東京都立大学名誉教授 飯倉照平」「講演 特務機関と人類学者が共に作った満蒙民族学 ソウル大学教授 全京秀」「シンポジウム 満州の昔話と教育 〈満州〉における昔話資料 法政大学教授 千野明日香 満蒙開拓青少年義勇軍 國學院大學栃木短期大學講師・民話研究者 野村敬子 満州の日本語教科書 東京学芸大学教授 石井正己」を実施した。あわせて「帝国日本と国語・教科書」のフォーラムを開催し、総合的な議論を深めることに努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの台湾・朝鮮・南洋群島の研究に続いて、国際研究者交流を図りつつ満州の昔話の調査・資料・教育について集中的な研究を進め、北海道のアイヌ教育を視野に入れることができた。あわせて、各植民地の昔話と教科書の分析を進めるとともに、ハワイ官約移民に関わって作成された教科書に視野を広げる機会を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
各植民地の昔話資料の収集と分析に関する基礎的研究を進めるとともに、海外の国際会議等に出席して学術交流を深め、この研究課題を広く共有してゆく。平成24年度はインドを植民地統治と昔話採集・研究における国際的なモデルとして考え、インドから研究者を招聘する国際交流の中でフォーラムを実施し、さらなる研究の進展を図ることにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)2012年10月にロシアで、東洋学者ニコライ・ネフスキーの生誕120年を記念した国際会 議が開催される。その会議に参加し、研究発表を行い、この研究課題に関する学術交 流を深める。それとともに、ロシアで所蔵するネフスキー資料の調査を実施して、今 後の研究の展望を図る。(2)2012年12月に「インドにおける昔話の調査と資料」の国際研究フォーラムを開催す る。インドの昔話について、植民地支配と昔話調査、インド昔話起源説の誕生、日本 への昔話伝播、北インドにおける昔話の現状等について、講演・発表・ディスカッシ ョンを実施する。(3)各植民地における昔話資料の収集と分析を継続する。
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