2011 Fiscal Year Research-status Report
詩歌のジャポニスム ──西欧における展開と日本モダニズムへの接合に関する研究
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23520220
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
坪井 秀人 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (90197757)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ジャポニスム / 短詩型(和歌・俳諧) / 翻訳 / 歌曲 / ドイツ / オーストリア |
Research Abstract |
ヨーロッパの諸地域において近代、日本の詩歌、特に和歌・俳諧等の短詩型文学がどのように西欧語へと翻訳され、さらにそれがどのように西欧歌曲へと作曲されていったか、二重の意味での翻訳過程について調査し、それが西欧におけるジャポニスムという芸術の潮流においてどのような位置をしめるかについて分析を行う本研究の第一段階として、ドイツ語圏における翻訳と歌曲化に関する資料調査を行った。2011年5月から8月にかけては勤務校のサバティカル期間を利用してライプツィヒ大学日本学研究室に客員研究員として在籍し、そこを拠点としてライプツィヒ大学図書館、ライプツィヒのドイツ国立図書館、ベルリン州立図書館、ウィーンのオーストリア国立図書館の音楽資料室(Musiksammlung)等において調査を行い、短詩型文学の翻訳テクスト、文学史書および短詩型手テクストにもとづく歌曲作品の楽譜ほか音楽資料の収集調査を行った。特にベルリン州立図書館ではドイツ語圏における日本文学の翻訳に関するデータベース(目録等)を収集するとともに、カール・フローレンツの日本詩歌に関する文献も多数調査することが出来た。ウィーンの音楽資料室では多数の楽譜資料を収集し、エゴン・ヴェレスの自筆譜等についても調査を行った。また音楽資料の調査にあたってはライプツィヒ音楽大学図書館の協力も得た。これらの調査によってドイツ語圏において日本の古典詩歌の翻訳過程にはある種の系統が存在すること、またその歌曲化においてもきわめて多様な創作が行われたことが明らかになった。また、ヨーロッパ地域においてこうした二重の〈翻訳〉が行われた言語圏としてドイツ語圏が中心的な役割を果たしたことが浮かび上がってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
短詩型テクストの翻訳と歌曲化の過程についてドイツ語圏については想定していた以上の分量の資料を調査収集することが出来た。翻訳過程についてある種の系統が存在していることも浮かび上がってきたことは収穫であったが、その全体像をつかむには至っていない。さらに詩歌翻訳の資料に関する調査が必要である。またこの結果として、ドイツ語圏がこうした動向において重要な地域であることを認識することも認識できた。短詩型テクストに作曲された歌曲の楽譜など音楽資料については主として対象としている20世紀初頭の時代のものはかなり多数収集できたほか、現代作品の資料についても、これを排除せずに収集を行った。その結果、20世紀初頭のジャポニスムへの関心がかなり後の時代にまで継続されていることもほの見えてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
短詩型テクストの翻訳については研究者の言語能力の制約もあり、ドイツ語圏以外の(フランス語、ロシア語等の)言語圏の調査には限界があるが、ヨーロッパのジャポニスムという大きな枠組みの中でこの主題に取り組む以上、やはり調査が必要になる。さしあたり、西欧における最初の短詩型テクストの歌曲化の例として考えているチェコん作曲家マルティヌーの歌曲"Nipponari"の創作過程について、プラハのカレル大学の研究者の協力を得て調査を行う。余裕があればフランス語圏における資料の調査にも着手するが、初年度で行ったドイツ語圏の調査をさらに継続する必要があることがわかったので、まずはドイツ語圏の調査を拡大することを優先する。その上でこれまで収集してきた資料を整理して、その翻訳過程と歌曲化の過程について幾つかの系統を想定しながら分析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度においてはドイツ語圏の資料調査を充実した形で行うことが出来たが、この地域(ドイツ、オーストリア等)の資料についてはさらに調査を継続させる必要がある。初年度において未使用の研究費を次年度においても活用することでそれを補うことが出来る。ドイツ語圏およびプラハその他チェコにおける調査旅行、プラハにおいては調査協力をお願いする予定のカレル大学の研究者への謝金も支出する。研究が進展すれば調査地域をフランス語圏にまで拡げる。国内外におけるジャポニスム関係の基礎資料、短詩型の翻訳、ドイツおよびチェコ等の資料の購入と複写等にも研究費を使用する予定である。
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Research Products
(9 results)