2013 Fiscal Year Annual Research Report
詩歌のジャポニスム ──西欧における展開と日本モダニズムへの接合に関する研究
Project/Area Number |
23520220
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
坪井 秀人 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (90197757)
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Keywords | 短詩型 / 翻訳 / ジャポニスム / モダニズム / 和歌 / 歌曲 |
Research Abstract |
美術の領域に特化されて研究されてきた西欧におけるジャポニスムの芸術を詩歌のジャンルから考察する研究はわずかだがこれまでにもなされてきた。しかし、詩歌の翻訳のみならずそれが歌曲として作曲され、言語間のみならず文学から音楽へとジャンル間の翻訳されていたという事実については、ほとんど明らかにされてこなかった。本研究では、和歌・俳句という日本の短詩型文学、特に和歌がどのような過程で西欧語に翻訳され、どのように作曲家によって歌曲化されたかを英語圏を除くドイツ語圏および東欧地域さらにフランス語の翻訳テクストによる作曲の例を対象に調査し、現時点でテクスト及び楽譜を入手または閲覧できた歌曲作品のリストを作成した。その結果、ドイツ語圏では日本にお雇い外国人として滞在したカール・フローレンツの訳業が基点となり、それを受けて訳著を刊行したパウル・エンダリング、そしてオリエント全般の文学を対象に大量の翻案を残したハンス・ベートゲによるテクストがそれらの作曲の基になっていることが判明した。そしてこれらのドイツ語訳がロシアやチェコなどの東欧圏に重訳されて拡がっていったことも確認出来た。また作曲例ではオーストリアとドイツにおいて、おびただしい和歌歌曲が作曲されていたこと、それに加えて、ロシアやチェコ、ポーランドといった東欧地域の作曲家が積極的に同じ和歌歌曲を作曲していたことが明らかとなった。調査はウィーンのオーストリア国立図書館、ベルリン州立図書館およびプラハのチェコ国立図書館などの海外の図書館と国内の大学図書館を中心に行い、その研究成果として「モダニズムのなかの〈和歌-歌曲〉」という論考を『JunCture 超域的日本文化研究』第5号(2014年3月)に発表したほか、そのドイツ語版を、本年中にスイスの出版社から刊行される論集Wort-Bild-Assimilationenに発表する予定である。
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Research Products
(7 results)