2014 Fiscal Year Research-status Report
本居宣長の国学の受容と国文学の成立に関する総合的研究
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23520221
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田中 康二 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (90269647)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 本居宣長 / 源氏物語玉の小櫛 / 係り結びの法則 / 文学史と思想史 / 擬古文 |
Outline of Annual Research Achievements |
5年計画の4年目にあたる平成26年度は、本居宣長の国学の受容に関して、4本の論文と1冊の単行書を刊行した。広く国学の擬古文については、「擬古文再考―村田春海『琴後集』文集の部をめぐって」において論じた。また、宣長国学における「歌」の意味については、「宣長国学における歌―敷島の歌・うひ山ぶみ・著書名」で取り上げ、宣長国学を文学研究と思想史学との両者にわたる領域であるゆえに、両者を見据えた視座が必要であることを論じた。個別の宣長国学の受容については、「『源氏物語玉の小櫛』受容史」と「係り結びの法則成立史」において論じた。前者は源氏物語の注釈書である『源氏物語玉の小櫛』が同時代および後進にどのように取り入れられたのかということを明らかにした。後者はいわゆる「係り結びの法則」がどのように意識され、法則化され、受け継がれてきたのかを論じた。いずれも宣長の意図と微妙にずれる形で受容されていく様相が確認できた。最後に単著として出版した『本居宣長―文学と思想の巨人』は、本研究のダイジェスト版ともなり得る新書である。宣長を文学と思想の両面からとらえることにより、その生涯と業績をバランス良く紹介し、一般読者への入門書とした。 以上のように、まとめの時期になる平成27年度をにらんで、本居宣長の国学の全面的かつ総合的な受容の様相を明らかにするべく、学会誌をはじめとする雑誌等において、科研の成果を公表し、大方の批評を乞うということをおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終年にまとめる著書『本居宣長の国文学(仮題)』について、以下の9割以上を公表し、批判を受けることになった。 第一部「本居宣長の著作の受容」には「1.『古事記伝』受容史」「2.『古今集遠鏡』受容史」「3.『美濃の家づと』受容史」「4.『源氏物語玉の小櫛』受容史」「5.『玉あられ』受容史」という五章、第二部「本居宣長の研究法の継承」には「1.本文批評成立史」「2.俗語訳成立史」「3.文学史成立史」「4.「物のあはれを知る」説成立史」「5.係り結びの法則成立史」という五章、合計十章の構成である。 以上により、これまで発表した論文のピアレビューによる微調整を経て単行書を刊行する準備に入ることが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの4年間で積み上げてきた業績をピアレビューにより修正し、より完成度の高いものを公にする準備に入る。具体的には、前著の出版を請け負っていただいたぺりかん社から『本居宣長の国文学(仮題)』を本年度中に出版し、より広いピアレビューを受け、科研の成果を世に問う予定である。補助金の使途としては、報告書を兼ねた著書をしかるべき同業者に配布し、ピアレビューを受けるために、当該単行書を買い取ることが最終年度の支出の大きな部分を占めるが、そのほかに出版にかかる打合せ旅費や索引作成にかかる謝金などを計上し、最終年度の研究を滞りなく進めるための最善の努力をする。
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Research Products
(7 results)