2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23520222
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
奥村 和美 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (80329903)
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Keywords | 国文学 / 萬葉集 / 長歌 |
Research Abstract |
後期萬葉の和歌を中心に、中国文学との比較的見地から研究を進めた。 一つには、前年に引続き初学書『千字文』からの受容のありようを、字形、表現などの種々の観点から考察した。中国詩文に基づいて和歌の表現をなす場合、初学書である『千字文』が佳句を圧縮要約して収載したものとして類書的な利用をされていたことを明らかにした。また、和歌における文字使用、文字選択においても、『千字文』が字体についての知識を得る一つの手引き書としても活用されたであろうことを具体的な例を通して明らかにした。このことは、萬葉集の精確な本文批判を行う上でも、『千字文』が参照されるべき有益な文献であることを示唆する。 もう一つには、大伴家持の和歌との強い関わりがすでに言われてもいる、唐代小説『遊仙窟』からの受容について、先行諸説を検討し直した上で、『遊仙窟』じたいのもつ表現の類型性或いは通俗性という側面から、中国詩文における『遊仙窟』の位置づけを再検討し、上代日本の和歌や散文の述作における修辞表現の教科書としての利用という側面を明らかにした。 後期萬葉の和歌における中国文学の受容について、『千字文』と『遊仙窟』という一見性格の全く異なる二つの漢籍の受容という観点から考察したが、それらを通して、上代びとの教養世界の広がりが明らかになったと同時に、中国文学のエッセンスを簡便かつ的確に把握しそして表現に応用するための実用書として両書が利用されたことを指摘しえた。
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Research Products
(3 results)