2011 Fiscal Year Research-status Report
岩国市に伝存する吉川家由来書を中心とした古典籍についての調査研究
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23520226
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
妹尾 好信 広島大学, 文学研究科, 教授 (10171357)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 書誌学 |
Research Abstract |
平成23年度は、もっぱら岩国市中央図書館が所蔵する和装図書の閲覧調査を行った。前年度から先行して行っていた調査の継続でもある。月1回~2回のペースで同館に赴き、館作成の台帳(NDC配列)に従って1点ずつ書誌データを調査カードに記入する作業を行った。秋以降は、調査支援者として大学院生を1~2名同行(旅費・謝金支給)し、書誌データの点検・確認とエクセルによる入力作業も並行して行い、目録作成のための準備を進めた。 岩国市に伝存する古典籍のうち、吉川家現蔵の典籍は吉川史料館に収められ、また吉川家が岩国市に寄贈した和古書は、岩国徴古館に所蔵され、それぞれ目録が公刊されていて、研究者の目に触れることができる。一方、岩国市中央図書館が所蔵する和装図書は、大正から昭和戦前・戦中に市内の旧家や名士から寄贈されたもので、江戸時代後期から明治20年代頃までに書写・刊行された図書類が1000点を超えて存在し、内容も多岐に渉っている。これらは目録が公刊されていないためにその所在がほとんど知られていないのが現状である。したがって、まず中央図書館所蔵の和装図書を悉皆調査して詳しい書誌データを記した目録を作成することが急務と考えた。 岩国藩の学問・文化・教養のレベルの高さを明らかにするためには、藩主である吉川家に由来する古典籍を調査することはもちろん大事だが、そればかりではなく、藩士や町人層の知識レベルを知ることも必要である。そのためには、寄贈情報の整った中央図書館所蔵和装図書は恰好の資料となる。少数ながら藩校である養老館の旧蔵書や、日新隊の講学所で使用された図書類が多数含まれていることも注目される。 なお、吉川史料館と岩国徴古館の調査についても、次年度以降調査を行う予定で、両館の担当者と面談して準備を始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
岩国中央図書館所蔵和装図書の調査については、平成23年度末までに点数にして約3分の1、冊数にするとほぼ半数の調査を終えた。概ね順調に進行していると言ってよい。秋から始めた書誌データの入力作業も順調に進んでいる。 調査済み図書のうち、総記の部と哲学の部に関しては、広島大学大学院文学研究科附属内海文化研究施設発行の『内海文化研究紀要』第40号(2012年3月刊)に、「岩国市中央図書館所蔵和装図書目録稿(1)―総記・哲学の部―」として発表した。 また、調査の過程で発見した貴重な資料として、天保7年書写の『厳島縁起』の1伝本を全文翻刻し、解題を加えて、広島大学 世界遺産・厳島―内海の歴史と文化プロジェクト研究センター発行の『厳島研究』第8号(2012年3月刊)に、「岩国市中央図書館蔵『厳嶋大明神御縁記』翻刻と解題」として発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、当初の研究実施計画にしたがって研究を推進する予定である。 岩国市中央図書館所蔵の和装図書の調査は次年度中にほぼ終了したい。そのためには月2回ペースで1泊2日程度の調査旅行と、夏期休業・学年末休業期間中の集中調査が必要と思われる。また、調査旅行にはできるだけ大学院生を研究支援者として同行し、調査データの点検・確認とエクセルによる入力作業を並行して行う。 図書館の理解と協力は得られているので調査のための頻繁な訪問に支障はない。多忙な日々の中でどれだけ調査旅行の機会を得られるか、また同行できる大学院生が確保できるかが課題である。 次年度末にも、調査済みの書誌データに基づいて一部の目録を作成し、「岩国市中央図書館所蔵和装図書目録稿(2)」として公刊する予定である。 また、岩国徴古館の調査については、同館作成の蔵書目録のデータ提供を受けて行う予定である。中央図書館の調査をほぼ終了できたら、こちらの調査にも取りかかりたい。 調査の過程で学術的に特に貴重と思われる文学資料が発見された場合は、本年度の『厳嶋大明神御縁記』と同様に、全文を翻刻して学界に紹介したいと思う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
岩国市中央図書館所蔵和装図書の調査のため、月2回ペースで1泊2日の調査旅行を行う。また、夏期休業中と年度末休業中には集中的な調査旅行を行いたい。予算費目中の「旅費」をこれにあてることになる。予算全体に占める「旅費」の割合が大きいのは、岩国市へ赴いての調査が本研究の主体だからである。 また、調査済みデータの点検・確認とエクセルによる入力作業のため、研究支援者として大学院生を1~2名岩国中央図書館に同行する。そのために、予算費目中の「人件費・謝金」をあてることになる。 書誌データの作成のための参考図書類を、必要に応じて「物品費」で購入する。 予算費目の「その他」は、調査・研究に必要な文具やメディア類の購入費である。
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Research Products
(2 results)